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漱石文明論集 (岩波文庫 緑 11-10)

漱石文明論集 (岩波文庫 緑 11-10)

漱石文明論集 (岩波文庫 緑 11-10)

作家
夏目漱石
三好 行雄
出版社
岩波書店
発売日
1986-10-16
ISBN
9784003111109
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漱石文明論集 (岩波文庫 緑 11-10) / 感想・レビュー

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ころこ

漱石が西洋に行った時は国家を背負い、日本に帰ってきて在野を貫いたのには、複雑な深い感情があったことは容易に想像できます。『博士問題の成行』『文芸委員は何をするか』『学者と名誉』にはそのことが反映されています。少なくとも存命中、国家から自らの文学が認められてはならない、国家から認められる文学は語義矛盾であるという感覚が、漱石の文学が命脈を保っている理由の一つでしょう。それは、「個人主義」がそう受け取られがちな戦後民主主義的な反権力の流れではない、「独立」と表現するのに相応しい気風だといえます。

2020/05/27

きいち

自己本位という四文字に救われたと言い、行きつくところまでいって斃れると言う漱石。西洋との相克とか、もはやどうでもいい。この激しさに惚れる。元気になる。◇漱石は精神を病んで自死したわけではない。精神とまともに向き合って、そのストレスがもたらした胃病に死んだいわば戦死だ。行きつくところまでいって斃れる、自らの予言を成就した存在。◇オリジナリティ、インデペンデントを称揚する漱石。それはそうだろう、でも漱石の究極の凄みは、それでもイミテーション、模倣もまた大切と言い切るとこ。選ばれし者の自負と恐怖、併せてここに。

2016/06/06

Major

【ismの功過】 ー1910年(M43)7月23日『東京朝日新聞』―Note 「人間精神上の生活において、吾人がもし一イズムに支配されんとするとき、吾人は直ただちに与えられたる輪廓のために生存するの苦痛を感ずるものである」文語調も手伝って難解であるが美文である。ここに言葉を厳密に選びながら綴る思想家、漱石がいる。《表面的》には主義という一つのismで作品や作家自身に先立って一括りにされることへの強い抗議を内容とし、当然その矛先は日本の自然主義文学に向けられている。

2024/11/14

chanvesa

「自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。…自己が主で、他者は賓であるという信念」(「私の個人主義」114頁〜)という他者の尊重。そして「どうしても他に影響がない限り、僕は左を向く、君は右を向いても差支ない位の自由は、自分でも把持し、他人にも附与しなくてはなるまいか」(129頁)という個人主義。個人主義もなく、「日本の現代の開化は外発的」(「現代日本の開化」26頁)という指摘により、日本社会の窮屈な状態の中、漱石は身も心も痛めつけられながら、悩み続けた。

2024/07/11

ももたろう

漱石すごい…、洞察力が凄すぎる。なぜもっと早くこれを読まなかったのか。「現代日本の開化」が白眉。文明開化とは何か、どのようにして起こるのか、普通の文明開化と日本の文明開化は何が違うのか、どうして違うのか。こういう疑問に対して、漱石が実に明快に語る。苦労を嫌い手軽さを求める心や娯楽を求める心が根元にある。日本における近代化は外発的であり、急速に発展した。近代化の恩恵を受けているにも関わらず、私は近代化への憂いを感じた。また、「個人主義」の解釈も誤解していた。互いの自由を認めることが核にあるようだ。

2016/03/08

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