林芙美子随筆集 (岩波文庫 緑 169-1)
林芙美子随筆集 (岩波文庫 緑 169-1) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
『放浪記』の作者の随筆集。身辺のことを書いたものが多い。林芙美子の飾らない、率直な性格が伝わってくる。日本の小説家の場合、小説を書くときは力が入りすぎて文章が息苦しくなることがあるが、随筆の場合は力が抜けて伸びやかな文になって、日本語の持つ温かみや美しさが伝わってくることが多い。それは林芙美子にも当てはまると思う。画家になりたかったことは知らなかった。太陽の光が強烈で、自然がくっきり見える九州で幼年時代をすごした影響かもしれない。
2014/02/04
壱萬参仟縁
「東京駅には人力車なんてなかったが、京都は人力車が随分多い処だ」(39ページ)。都の相違が垣間見れる。「せめて恋愛の上だけでも経済を離れた世界を持ちたい」(58ページ)。ケチケチしていればうまくいかなくなるのだろう。「人一倍筆が遅くて、何時も締切を一週間もすぎてしまう」(101ページ)。謙遜しているのであろうが、現代ではこんな悠長がことが通らないので、まだのんびりした時代もあったものだと思う。「家ではよく腹をたてて自分で泣きたくなる」(160ページ)。厳しい生活の辛さ。図書館での乱読暴読(211ページ)。
2013/01/08
モリータ
落合って、妙正寺川をはさんだ谷になってて山手通は高架になってるし、目白のほうにあがっていく坂のところからはまた雰囲気が違ってておもしろいと思った(林芙美子記念館は坂をのぼるところにある)。
2013/12/25
nonicchi
大好きな「朝御飯」が収録されていると知り図書館で借りました。小説よりも随筆の方が、飾らない人柄がにじみ出ていて好ましく感じます。彼女の歩く街並みや生活の様子が往時をしのばせ、時に「わかる!私も!」と時空を超えて林さんと握手したくなる瞬間があり、とても素敵な読書体験でした。只今、2008年ごろ出版された吉屋信子の特集本を読んでいるのですが、林芙美子、佐多稲子らとの座談会や芙美子追悼の文章が掲載されており、吉屋さんから見た林芙美子を興味深く拝読しています。
2022/04/26
砂子
花ならばたんぽゝやすみれが好き。着物は木綿。貸家さがして、歸り路に蕎麦屋で鍋焼を頼み、椎茸だのほうれん草だのを味はつて食べる。繪畫ならアンリ・マテイスと萬鐡五朗が好き。女優さんは堤眞佐子が好き。素朴と、純粋と、生活を愛する芙美子さん。
2019/07/10
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