日本の島々,昔と今. (岩波文庫 緑180-2)
日本の島々,昔と今. (岩波文庫 緑180-2) / 感想・レビュー
kawa
和歌山市「有吉 佐和子記念館」で本書生原稿を目撃、ノンフィクション。40年余前の作品ながら骨太読み応えあり、個人的には大正解の選書。北海道焼尻島・手尻島から番外編3の尖閣列島までの12カ所の島。秀逸なのは主要テーマに漁業動向を据えたこと。あちらで聞いたことが、こちらでは知らなかったり、頓珍漢に伝わっていたり現場に行くことが如何に大事かがよく理解できる。因みに日本漁業は、本書取材直後にピーク、日本人の魚離れもあって現在では2分の1の規模になっている。各地の歴史的な経緯も作家目線でしっかり書き込まれてグッド。
2023/07/11
Shoji
国防上、重要な島々。隣国が所有権を主張している島々。我が国固有の領土であるのに、他国による実効支配が続く島々。自由に往来ができない島々。日本(本土)の繁栄のために犠牲を強いられた過去を持つ島々。悲しい過去を持つ島々。作者は実際に訪れたり、上陸が叶わぬ地ではヘリで飛び、チャーター船で廻る。地元民の生の声を聞く。そこに見えるのは、大変なご苦労をなさっている地元民と霞が関のお役人の温度差だ。昭和54年から55年にかけて執筆された本であるが、45年を経た今、こと領土問題に関しては何の解決にも至っていない。絶句。
2024/01/07
chanvesa
学生の時に、アルコール飲料大好きな先輩が三一書房の『ほんものの酒を!』という本を貸してくれて、当時流行っていた「週刊金曜日」の「買ってはいけない」の原型だと言われた。でもこういった企画の原型、元祖が有吉佐和子さんの『複合汚染』だと思っていた。この方の好奇心や探究心は古びない。この本の漁業の問題はもちろん、竹島や尖閣諸島の問題に関する指摘はいまでも通ずるところあり、納得する。尖閣諸島周辺から石油が出なければ良いのに、という指摘はユニーク。確かに天然資源が出るところは強烈な環境だ。
2017/09/14
壱萬参仟縁
1979年初出。昭和の時代。ルポ。 本書は中学社会科地理や総合学習で重要参考資料と位置付けてほしい。 焼尻、天売、種子、屋久、福江、対馬、波照間、 与那国、隠岐、竹、父、北方四、尖閣の各島々の話。 焼尻は都会志向。天売は後継ぎも多い。対照的(15頁)。 北海道庁職員には焼尻出身が多いという優秀な島民像(24頁)。 島の振興政策が問われるところ。 天売のフィッシュシステムが図式化されている(37頁)。 特約店、直営店、小売店が売り惜しみで、値上がり待ちをしている模様。
2014/03/30
tamako
北方領土も竹島も尖閣諸島も、離島固有のいろいろな課題も、本書が連載されてた昭和50年代からなーんにも解決していない。コンピュータもスマホも当たり前に使われ、世界中と安価に映像付きでリアルタイムに会話ができ、世界中の誰でも世界に向けて物申すことができる時代になったのに。という意味では、小説以上に寿命の長い本なのかもしれない。尖閣諸島から石油が出なければ良い、地殻変動で島が無くなってしまえば良い、極東の平和のために、と祈る著者にかなり同感。
2023/01/28
感想・レビューをもっと見る