六白金星/可能性の文学 (岩波文庫 緑 185-1)
六白金星/可能性の文学 (岩波文庫 緑 185-1) / 感想・レビュー
里愛乍
一流主義に対する二流主義。自らを二流論者と言う彼の小説は確かにどちらかといえばB級、正装して出向くナントカ劇場というよりは普段着OKな芝居小屋というようなイメージを持っています(個人的に)「一流」が定石で完全版で動かし難い位置のものであるならば、弱点だらけの「二流」はそれを晒すことによって無限の可能性を秘めている。昨今の「文学」と「エンタメ」についての論議を思い出した。自分が織田作を他の文士より気にかかっている理由が少しわかったような気がしました。
2016/10/21
優希
大阪の空気が伝わってくるようでした、大阪の作家が愛した大阪がここにはあるのかもしれません。戦後発表された短編をおさめており、当時の良き雰囲気が伝わってきて面白かったです。
2024/02/04
那由多
生活臭とも言える人間臭さが、世相と庶民の情緒を手に取るように見せてくれる。大阪への愛情、 人間への親しみと愛しみが端々から窺え、生活が困窮していく場面でも失われない軽快さが読み手に負担をかけない。小説から随筆、文芸論までを詰め込んだ短編集だが、構成の妙味が味わえる編集だった。岩波はいい仕事をする。
2020/11/21
a子
お目当ての「可能性の文学」ほか「髪」「競馬」「世相」などなど小説も面白かった。メロドラマ風あり私小説風あり評論あり…織田作之助を堪能!古さを感じさせない読みやすさ。本の中でうごうごしてる愛すべきダメ人間たちに向けた視線が優しくて、なんかいい。自身と小説の可能性を模索し、様々な実験を試みた痕跡を感じる作品たちを残し、道半ばで散った織田作。長生きしてたらどんな小説を書いたんだろう。二流こそに広がる可能性。ニ流万歳!と叫びたい。
2020/06/29
みか
『可能性の文学』織田作は、「外国の近代小説」は「可能性の文学」であると言う。「人間の可能性を描き、同時に小説形式の可能性を追求している」ことを評価している。「無限の可能性」を含むスタンダールやバルザックの文学に対して、「日本の伝統的小説は可能性を含まぬ」と批判する。「可能性の文学」とは「新しい文学」とも言い換えている。織田作は、「明治大正の作家が既に古典扱いをされて、文学の神様となっているのは、どうもおかしい」と疑義を呈し、当時の文壇における「志賀直哉礼讃論」を批判する。
2021/05/17
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