KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

けものたちは故郷をめざす (岩波文庫)

けものたちは故郷をめざす (岩波文庫)

けものたちは故郷をめざす (岩波文庫)

作家
安部公房
出版社
岩波書店
発売日
2020-03-15
ISBN
9784003121412
amazonで購入する

けものたちは故郷をめざす (岩波文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ケイ

あきらめたら、そこで終わり。歯を食いしばれ。アイツらの好きにさせるな。こんな所でも〈情けは人の為ならず〉なんだな。どちらかが正気の時に、少しでも前に進め。引き揚げてきた人たちの苦しみは、私たちにはとうていわかるものでは無い、と改めて思った。

2022/09/30

やいっち

公房のいい読者ではないが、少しは読んできた。やはり、『砂の女』の実存主義的……やや形而上的な世界の印象があまりに強い。だからか、本作品は、満州国崩壊の混乱の中、突然投げ出された少年の、謎の人物との必至の脱出劇というリアルな物語であるにも関わらず、何処かまさに何処までも砂の中を藻掻く、いい意味での抽象性を感じた。恐らく(ネタバレになるが)物語の結末で、少年が日本への帰国の船にやっと乗船できたのに、なぜか日本という幻の故国を目の前に上陸が叶わないという不条理な場面になっていることに起因するのかもしれない。

2021/10/17

アキ

本年3月に岩波文庫から復刻されたので、昨年読んだところだったが、再読した。久三のヒリヒリした皮膚の感覚が感じられる程の日本への逃避行。満州の荒涼とした地平線の見える丘を、正体も魂胆も見えぬ高と共に、いつ行き倒れ狼の餌食になってもおかしくない状況が続く。ついに日本人街に着くが、塀の向こうの日本人には証明書がなければ相手にもされない。国家が崩壊し、誰が敵で誰が味方か疑心暗鬼の中でだまし騙され生き残るうちに、飢えと寝るところを見つけるために皆がけものにならざるを得ない。戦争は昨日と今日のつながりをなくしてしま⇒

2020/09/04

藤月はな(灯れ松明の火)

作中でしきりに日本人と言い張る久三。だが、満洲にてロシア人たちによって育てられた事で彼は日本とは違う価値観を持っている。残念ながら、その価値観は日本特有の価値観を持つ者達にとっては異質で相入ることは出来ないものだ。それを象徴したのが日本人村での扱いなのだ。そして帰属を求めていた久三にとってはその価値観は最早、不必要だが、アイデンティティの為に捨て去れないものなのも事実だ。後、何処にも帰属がなくなる事で、時代のエアポケットとしての「満洲」の象徴とも言える高が「久三を始終、呪縛する者」として描かれるのも意味深

2020/04/10

chantal(シャンタール)

読了し、巴哈林と言う地名を地図で探してみるが見つからない。架空の地名だったのか?しかしその他の地名はほぼ見つかったので、大体この辺りから瀋陽を目指したのだろうと当たりをつける。戦後の旧満州、ソビエト、八路軍、国民党軍が入り乱れる地を逃れ、孤児となった久三はひたすらまだ見ぬ故郷、日本を目指し南下する。途中出会った怪しげな高と旅を共にするが彼は一体何者なのか?ミステリー要素も含みながら雪と氷に覆われた荒野を彷徨い歩く描写は読んでるこちらまで凍傷になりそう。そして衝撃的なラスト。安部公房初期の作品。すごかった。

2024/08/14

感想・レビューをもっと見る