東京百年物語2 一九一〇~一九四〇 (岩波文庫)
東京百年物語2 一九一〇~一九四〇 (岩波文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
東京が舞台の短編作品集第2作目です。前回の作品集は江戸と明治の初めの頃の時代のものが多く未読の作品が多かったのですが、今回はかなり既読のものがありました。谷崎、芥川、志賀、乱歩、堀、夢野などです。やはりいつ読んでも印象に残るものは、どこでも選ばれるものなのですね。前回のロバート・キャンベルさんの解説もよかったのですが、今回の十重田さんの解説も東京の当時の状況をうまく解説してくれていました。
2018/12/09
HANA
明治は遠くになり、世は大正へと。東京も発展の様子と、それに伴う影の部分がクローズアップされつつあるよう。大正の東京といえばまず関東大震災であるが、意外にも直接的にそれに触れたものは少なめ。あと前巻と異なり小説の占める比重が大きくなった分、この時期に活動した作家のスタンスの違いがよくわかるようになっていると思う。個人的には谷崎潤一郎や乱歩の恐怖と幻想に軍配を上げるけど、今まで食わず嫌いであまり読まなかった志賀直哉もこういう形で読んでみると悪くない。大正小説の独特の香気が感じられるいいアンソロジーであった。
2019/04/25
ワッピー
茗荷谷駅前の書店で閉店日に入手。残念ながら前後の巻はなし。1910(明治43年)~1940(昭和15年)の東京は、当時から常に変化の街だった。鴎外の名編「普請中」から開始する東京の旅は、不思議な廻り灯籠のように様々な情景を浮かび上がらせ、各時代の空気を届けてくれます。ワッピー的には、関東大震災後の復興期の神田界隈を描いた「泥濘」(梶井基次郎)や日本第一の競走場に翻弄される「恐ろしい東京」(夢野久作)、寿司屋の少女と湊先生の交流「鮨」(岡本かの子)は特に印象深く感じました。巻末に東京年表と35区の地図付き。
2020/03/26
かふ
東京の都市開発の小説中心。森鴎外『請負中』どこもかしこも工事中の中で逢引する日本のエリートと外国婦人。銀座や丸の内はデート小説が多くて、浅草だと猟奇的な殺人事件が多いような。江戸川乱歩『押絵と旅する男』。この中で一番は芥川龍之介『魔術師』。谷崎との論争『文芸的な、余りに文芸的な』の中で「筋のない小説」を展開したが、この芥川の短編はきっちり起承転結がある物語になってそれが見事である。魔術師に弟子入りする男の話。最初に「催眠術だ」と言って種明かしをしているのに、その夢落ちに見事に嵌められてしまう。
2019/03/23
元気伊勢子
谷崎潤一郎、江戸川乱歩の怖い小説が印象的。堀辰雄の水族館の話も良かった。1が明治時代の江戸の名残りを残していて、真面目でお堅い感じなのと比べると、2は、大正時代、昭和初期の華やかではしゃいでいる感じが伝わる。
2021/03/12
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