東京百年物語3 一九四一~一九六七 (岩波文庫)
東京百年物語3 一九四一~一九六七 (岩波文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
東京が舞台となっている文豪たちの小説のアンソロジー三部作で最後の巻です。1941年から1967年までの作品が収められています。太宰治の「東京八景」から吉行淳之介の「廃墟の眺め」まで私の小さい頃の作品もあったりでなつかしく読みました。上林暁の「国民酒場」や稲垣足穂の「有楽町の思想」などは当時の状況をうまく描いているのでしょう。
2019/01/15
HANA
最終巻は第二次世界大戦から高度成長期まで。時代を反映してか、先の二冊に収められた作品群とは趣を異にし、どの作品も生活というものが張り付いた作品ばかりのように思える。特に第二章、占領期の作品には特にそれが顕著。満員電車や飢えの記述ばかりでげんなりする事もしばしば。世知辛くてなかなか読み進めるのがきつかったが、足穂や百鬼園先生、山川方夫は生活を描きながらもそれを超えた何かを感じさせるのは流石というべきか。三冊通して読むと、年表でしか知らなかった東京の歴史の底に流れるものを朧気ながら感じれるようであった。
2019/05/09
かふ
第二次世界大戦から敗戦まで。戦時の物資不足の中で配給制度(統制経済下)の中での大衆酒場を描いた上林暁『国民酒場』の一杯の美味しさと二杯だと急いで飲みすぎたという感覚が面白い。飢えているときの貴重な一杯というのは文学もそうかも。稲垣足穂『有楽町の思想』は戦時それも敗戦直前でこれはなんだろう。未来主義的なそれでいて敵機がやってきて恐れよりも撃墜を信じて疑わない能天気さ。しかしながら湾岸の描き方とか現代にも通じる感覚で、それが日記(それも創作なんだろうか?)で書かれているところに稲垣足穂の特異な感覚がある。
2019/05/02
元気伊勢子
3冊通して読んでみると東京の姿が浮かび上がった。今の東京が関東大震災、第二次世界大戦を乗り越え、その時代を生きた人達のお陰であるのだということを忘れずに生きていきたい。また、飢えや殺伐とした空気を想像すると戦争は、嫌だなと思う。
2021/03/17
けろ
太宰治、志賀直哉、梅崎春生、中野重治、森茉莉、三島由紀夫、山川方夫、遠藤周作、吉行淳之介他、錚々たる作家16名の筆による戦後廃墟の東京についての小説。食べ物について記述が多いと感じた。しかも飢えに直結している状態での「食べ物」なので、ここまで貧しく悲惨だったのかと、暗く惨めな気持ちになった。戦争は本当に恐ろしい。戦争による貧乏と食糧難を知る世代がいなくなっていく中、2018年にこのような本が刊行されたことは素晴らしい。
2023/02/01
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