若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇 (岩波文庫)
若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇 (岩波文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
三島由紀夫の演劇と言ったら『近代能楽集』が印象的だが、こちらも『近代能楽集』に通じる思想や美学が貫かれているのが面白い。『黒蜥蜴』は江戸川乱歩の手による原作は既読。原作の妖美さを損なうことなく、純度の高い無垢さであるからこその残酷の美学と哀しみが貫かれている最早、天晴れとしかいえません。お亀さんの良い台所の見方が好き。そして「あなたがこれ以上生きていたら、わたしがわたしでなくなるのが怖いの。そのためにあなたを殺すの。・・・好きだから殺すの」は、これ程まで、甘美で真摯な愛の告白は聞いた事もない!
2018/12/27
くさてる
「黒蜥蜴」目当てで読み始めたら、最初の「若人よ蘇れ」で倒れた。なにがどういいと言語化できないけれど、これはもう、すさまじく良い。三島由紀夫といえば、あの最後と耽美と思想で分かった気になってしまっていた気がするけど、この極限状態での人間性への深い洞察にはやられた。「喜びの琴」もすごいよ。怖いくらいだよ。もちろん「黒蜥蜴」も素晴らしかった。すごいものを読みました。
2019/01/26
しんすけ
タイトルは『若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇』となっているが、ぼくの関心が最も高かったのは、他一篇に相当する「喜びの琴」だった。 「喜びの琴」が発表されたとき、ぼくは高校3年だった。1964年のことである。 文学座が公演することに決まり稽古が始まったとき、俳優の一人だったがが「こんな台詞は語れない」とか言い稽古が中止になった。そのニュースは終日のように流れていた。それは、劇団員の一部は文学座を退団し劇団雲を新たに創設した後のことであり事件が続くことで強く記憶に残ってしまった。
2020/11/01
ちゃっぴー
お互いの恋心を探り合う黒蜥蜴と明智のスリリングな会話が面白い。「要するにあなたは報いられない恋をしてらっしゃる。犯罪に対する恋を。」「己惚れかもしれないが、僕はこう思うこともあります、僕は犯罪から恋されているんだ。」どうしてもセリフが頭の中で美輪明宏と天知茂(古っ)になってしまう。三島の美学が詰まった戯曲集。
2019/01/19
あ
若人よ甦れ・・・戦時中、若いが身体的諸事情があって、後方で工場勤務をしていた学徒の群像劇。劇中、学生ながら兵役に服している人のことを、学生言葉で「ゾル」と呼んでいたが、ゾル(独語?)=ソルジャー(英語)ときて、漫画の仮面ライダーの「ゾル大佐」が連想されてしまいました。 黒蜥蜴・・・何年か前に映画、金城さんの「怪人二十面相」を見ましたが、昭和初期の雰囲気が似ていました。美輪さんがおっしゃっていた、「美しいモノ、憧れるモノ、楽しいモノ」が描かれていたと思います。 喜びの琴・・・上司に裏切られた主人公が、聴く音
2020/09/08
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