開高健短篇選 (岩波文庫 緑 221-1)
開高健短篇選 (岩波文庫 緑 221-1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
新潮社での『パニック・裸の王様』で読んだ作品、多し。「なまけもの」の現状に適応できない自分への惨めさや軽蔑していた相手の方が上手・若しくは高潔だったという事実に打ちのめされる描写が時を超えても身近だ。だからこそ、そこから思い知らされた失望が生々しい。そしてベトナムでの生活を描いた短編集が素晴らしい。特に阿片を吸っても思ったような、幸福感は得られないという「飽満の種子」の虚無から得た確信が跡を引く。
2019/05/22
禿童子
物故作家の作品集を手に取ったのは懐かしさからくる感傷かもしれないが、切れ味の鋭さはいささかも衰えず、不覚にも私の胸を容赦なくえぐった。初期の『パニック』『巨人と玩具』『裸の王様』は、自然・世間・俗情への告発の刃とそれがブーメランのようにかえってくる自己嫌悪の苦さが内面を排した観察の文体で刻まれている。アウシュビッツとベトナムに乗り込み、人間の卑小さ、暗さ、死の接近、おびえを「考えるのではなく感じた」ままに描くために、直喩や暗喩や飛躍が横溢する「豊饒な虚無」と言うべき開高健の文体が生まれたのではなかろうか。
2019/03/30
ドラマチックガス
面白いけど、重い。年度末年度始めの疲弊した頭にはきつく、一時中断。再開しどうにか読み終える。全般にとにかく「臭い」。臭いの描写がとにかくお見事だった。現代に表れたら、非難轟々になってしまうのかな。痛烈な天皇批判、戦場ルポ(しかも一時行方不明)、明示はされていないけれど買春(少女を含む)を匂わせる描写…ただやはり、説得力、重みは桁外れ。解説で、開高健の戦場ルポに対し三島由紀夫が「想像で書いたなら立派だけど実際にみてきたならそれは作家のやることではない」みたいな批判をしていたことを知り、こちらも目からウロコ。
2023/04/22
みわーる
ほとんどの作品が、人生のどこかで読み、吸引し、呑み込んだはずの短篇だったが、それでも読書中になんどもうめいた。熱を発して、血が踊る。行に走るエネルギーにぶっ倒される。ああ、開高サン、愛していますー。
2020/09/16
ぷるいち
面白いが、さすがに古い。若い時の作品は精緻ながら、テーマや展開が結構ベタで驚いた。なんというか、ドラマの筋書きっぽい。昭和っぽい。 ベトナムに渡ったあとのエッセイの方が何倍も面白くて、特に大富豪と釣りに行く「貝塚をつくる」が白眉。
2020/03/12
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