ドリアン・グレイの肖像 (岩波文庫 赤 245-1)
ドリアン・グレイの肖像 (岩波文庫 赤 245-1) / 感想・レビュー
KAZOO
この作品については。比較的に若い頃に縮刷版のような感じで読んだのを覚えています。あらすじだけは覚えていたのですが、このようなかなり対話が多い長編小説だとは思ってもみませんでした。当時のイギリス(19世紀)の生活の様子などがわかるような気がしました。富士川さんの訳が非常に読みやすい感じでした。
2019/11/01
Gotoran
若さを十二分に体現している老けない主人公のドリアン・グレイ、しかし、彼は自分の肖像画を介して老いていく自分を客観視することで苦悩に陥る、自分が罪を重ねる毎に肖像画見ては追い詰められて堕落していくドリアン。ヘンリー・ウォルトン卿の悪魔の誘惑。ドリアンに惹かれる画家ヴァジルの破滅。なんと人間は愚かなことか。…ドリアンの若く、美しさを保つ肉体と醜く、堕落していく魂の対比が象徴的である。オスカー・ワイルドの芸術観、道徳観を垣間見ることができる読み応え十分の作品であった。
2020/09/24
yumiha
大好きなマロリーシリーズ(キャロル・オコンネル)に2度は登場した本書。ドリアン自身はいつまでも若く魅力的なのだけれど、その代わりに肖像画が老いて醜悪さを増していくのだそう。女性に人気のアンチエイジングか?気になりますがな。〈逆説の王子〉ことヘンリー卿の穿った視線に何度かニヤリとさせていただいた。そのヘンリー卿の本質は「善良」と見抜いていたのは絵描きのバジル。でも若かったドリアンは、まるごと影響されて堕落の道を突き進む。それでも罪の意識から逃れられずに上塗りするがごとく更なる悪行に手を染めるドリアン。
2020/07/23
ケイトKATE
類まれな美貌を持つドリアン・グレイは、画家バジル・ホールワードの肖像画のモデルとなった。ドリアンの肖像画を見た唯美主義者のヘンリー・ウォットン卿はドリアンに魅せられ悪徳に満ちた美へと導く。純真無垢だったドリアンもずっと美しいままで、絵が年を取ってほしい願望に憑りつかれ、ヘンリー卿の誘惑に乗り転落していく。退廃と耽美が混った小説であるが、悪徳と否定されているものから美を見出していく逆説的な発想は、文学だけでなく様々な芸術に影響を与えている。特に、ヘンリー卿の皮肉を含みながらも説得力のある言葉は象徴的である。
2020/10/24
カラスノエンドウ
妖しい魅力には抗えません。魔窟に吸い込まれてゆくドリアンに痺れてしまいました。美や芸術について長々と語られる中盤の章は、私には馬の耳に念仏。でも、それが分岐点となって主人公の変貌ぶりが際立ちました。会話の妙や、花の香りが漂い目に浮かぶような色彩鮮やかな情景や表現の美しさにハッとさせられることもしばしば。これは不覚の1冊。【G1000冊】
2021/01/30
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