灯台へ (岩波文庫 赤 291-1)
灯台へ (岩波文庫 赤 291-1) / 感想・レビュー
遥かなる想い
情感豊かな心理小説である。 ほとんど どこにも行かない展開でありながら、 ラムジー夫人と それを取り巻く人々の 声は 目まぐるしく、重層に重なり合う。 人々のつぶやきに終始したこの作品… 八人の子を持つ ラムジー夫人の 充足した人生が 印象に残る展開だった。
2017/10/15
ケイ
私からウルフへの親和性が低いようだ。視点の入れ替わりや切り替わりは見事であるが、感動ができない。入り込めないと言ったほうが適切か…。おそらく登場人物の考え方に感情移入ができないからだろう。うまい、素晴らしいと思うが、心があまり動かなかった。
2016/09/14
ふう
灯台へ行く前の一日を丁寧に描いた400㌻だと勝手に思い込んでいたのですが、読み進めていくうちに、人や家族の時間はこんなふうに流れていくのだと静かな衝撃を受けました。そんな時代だったのでしょうか、人はこんなにもたくさんのことを深く思い、考えていたのですね。その思いや考えを表現する言葉や文の美しさと豊かさ。想像力が乏しく、なかなか入りこめない場面もありましたが、亡くなった人をずっと思い続け、反対に亡くなった人がずっと存在し続けることが印象的でした。
2020/06/17
Kajitt22
スコットランドの孤島を舞台に、登場人物のたゆたう想念の描写で綴られる別荘での一日、そして十年後の一日。人々の思いはろうそくの炎のように揺らぎながら、絡み合い、すれ違い、時間をも飛び越え、あるいは消滅する。戦時下、突然の死者への思いは静かな悲しみに満ちている。めぐってくる灯台の三本のまっすぐな光は唯一の確かなものかもしれない。この作品でヴァージニア ウルフは自分のvisionをみつけたのだろうか。
2017/11/29
のっち♬
「なぜ人生はこんなに短く不可解なのか」「距離って途方もない力があるものね」スカイ島の別荘を舞台に、第一次大戦を挟み、登場人物たちの意識の流れを次々と交錯させながら辿っていく形で小説の構造が展開される。自由奔放な話法の転換、章ごとで語り口・視点を変えていく実験性、体験や人間関係の複雑さを平明かつ清澄な言葉に起こす筆力、詩情に富んだ美しい文体は、繊細な感性と探究心に富んだ著者ならでは。嵐のように時代が過ぎ去る様を描いた第二章が短くとも濃密で、人物面では優しくあたたかいラムジー夫人や感受性豊かなリリーが魅力的。
2020/08/01
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