アーネスト・ダウスン作品集 (岩波文庫 赤 295-1)
アーネスト・ダウスン作品集 (岩波文庫 赤 295-1) / 感想・レビュー
歩月るな
ワイルドやビアズリーの友人ダウスン、南條編訳による作品集。小説家や音楽家が語り手となる短編小説はどれも類型的《変奏》で、その結末はどれも当然のように思われる。そこに横溢するのは、その時はそれが正しいと思われる選択にすら誰しもが懐疑的ならざるをえないディレンマである。ささやかな幸せの描写にこそ至福があり、外面的な立場がどう好転しても人々は内面では過去の時代に生きている。そう見えなくても、どれもハッピーエンドなのではないかと問いたくなる。身悶えするほど苦しくて仕方が無い傑作揃い。やはり万人向けとは言えないが。
2016/04/14
壱萬参仟縁
解説によると、家庭教師についたりしたが、学校へは行かなかった(266ページ)。センチュリー・ギルドはアーツ・アンド・クラフツ運動のホーン、イメージ、マクマードウが中心(268-9ページ)。「彼女は家庭教師の仕事に就いて、男の帰りを待った」(176ページ)。19世紀後半の話。貧しく、図太いが、親切な人種である、漁師が出てくる「フランシス・ドンの死に方」(225ページ)。誰しも眠るような死に方を望むが、たいていは断末魔で苦痛のうちに死す。現世での行いが全てだろうな。偽善者につける薬はない。漁師の着実な生き方。
2013/02/22
rabbitrun
悲恋と秋と酒の詩人の作品集。春にして来る秋の黄昏を感じた。幸福の陰に潜む不幸への眼差し。
2015/04/12
ラウリスタ~
『風と共に去りぬ』の元ネタとなった「シナラ」という詩を含む、詩と短編の集成。ラテン語を習い始めた身としてはラテン語の表題が付いた詩にはテンションが上がる。フランス文学への造詣も深く、第二の母語と言えるレベルだったそう。作風としてはむしろフランスの詩人の影響を強く受けているそう。詩は恋愛詩中心、おそらく美しい詩なんだと思う。短編はなかなか感動的。バイオリンを巡る物語なんかはノスタルジーに溢れ即映画化決定な勢い。詩も小説もこじんまりとしてはいるが、粒ぞろいな印象。良かった。
2011/07/20
SIGERU
アーネスト・ダウスンが、纏ったかたちで文庫により気軽に読める日が来たことを、まず言祝ぎたい。しかも、南條竹則氏による達意の翻訳だ。ダウスンは世紀末詩人の代表格として我が国にも夙に知られ、ボヘミアンを地で行ったような芸術至上主義かつ頽廃的な実生活が半ば伝説化している。序詩に含まれた「酒と薔薇の日々」という章句が、ダウスンの生涯を端的に表しており、まことに象徴的だ。爾余は、有名な「シナラ」を含む、喪失と追憶を嫋々と歌う抒情詩が続く。「毒酒アプサント」「夢の王女」のような蠱惑に充ちた世紀末的作品は例外的である。
2017/01/16
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