武器よさらば 下 (岩波文庫 赤 326-3)
武器よさらば 下 (岩波文庫 赤 326-3) / 感想・レビュー
イプシロン
戦争によって生みだされるものは何一つないというテーマを、赤子の死産と愛する人の死によって描き出しているのが見事。だがヘミングウェイ独特の文体ゆえにそれを感情で味わうのはなかなか難しいかもしれない。――「あなたはいのちを重く見なさるかな?」齢94歳のグレッフィ伯の問いかけこそ、この作品最大の問いかけだろう。それに対する主人公の回答が実に傲慢で、信心深さの無さを曝け出す場面は、この戯曲的小説のハイライトといえよう。信仰を持つとは自分の愛する者だけに目を向けることではなく、あらゆる生命に目を向ける道なのだから。
2016/01/21
特盛
評価4/5。人生において何か幸せな時期が続くとする。こんなことはいつまでも続かない。いつ何時運命が残酷にもてあそぶか分かったもんじゃない。そんなことを考えてしまう。物語なら猶更だ。100%幸せなシーンになると、ページを繰るのが悲しくなってしまう。本作で中盤に描かれたスイスの山荘でのつかの間の日々は、まるで遠い美化された記憶の様。終わらないでくれ!でも運命、或いは偶然性は追いかけてくる。個人は縁を一方的に勝手には切れないのだ。火にくべた薪の上を歩く蟻や戦争でヘンリーが見たいくつかの死。そして物語の結末。
2024/05/16
ペペ
上巻と同じく淡々と書かれており、上下巻通して戦争の無常さを読者に訴えかけてきた。
2016/04/16
ぴーひゃらら
結局二人は戦争から逃げ切れてはいなかったのだろう。戦争は何かを生み出しもするが、同時にあらゆる点で人を不幸にする。
2010/07/31
じゅういちじゅうに
戦争の中にも日常は生き延びるけれど、その日常は戦争によってがけっぷちにまで追われていて、戦争が続く限りいずれかは落下する、というのが自分の感想。素晴らしい解説に従って様々な読み方が出来た。
2008/11/13
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