孤独な娘 (岩波文庫)
孤独な娘 (岩波文庫) / 感想・レビュー
白のヒメ
主人公は新聞のお悩み相談室の回答者。「孤独な娘」とはいっても、独身の男である。新聞に寄せられる悩みは、まだ若い主人公には手に余るものばかり。上手く回答を書けるはずもなく、信心している神も何も答えてくれないのだった・・・。1930年代に書かれたとは思えないほど、現代的。てっきり古い内容だろうと思っていたので、全く今もって色あせてないのにびっくりした。やっぱり人は他人の心配よりも、まずは自分の心配なのだなと素直に思う。自分の人生をきちんと生きられなければ、他人の人生に助言など出来るはずもないのだよな。
2017/12/20
藤月はな(灯れ松明の火)
生活苦、ままならぬ現状への不安や苛立ちなどが相談の手紙が送られる中で性別を偽って答える「孤独な娘」。しかし、彼は相手を適当に流す筈が読む内にずぶずぶと相手の憂鬱や孤独に共感していく。女性として振舞いながら恋人や誘惑していく年増女に侮蔑の視点で見る傲慢さと相手を見下しているつもりが自分も取るに足りない存在であることに気づく卑小さがひりひりと読者の卑小な自負心も焼き尽くす感覚に陥ります。鬱状態には読むことをお控えなさってください。最後の都合の良すぎる宗教的体験からのラストは衝撃的で忘れられそうにありません。
2013/07/08
harass
この作家の別の代表作「いなごの日」からこちらを手に取る。1933年作。主人公は読書の投稿からの人生相談の連載記事『ミス・ロンリー・ハート』を担当しているが、次第に彼は…… 小説としては破格な作品で全く先が読めない。人生のきつくえぐい部分をさらけ出している。30年代によくここまで書くものだと驚いた。シュールな表現もありそれらから個人的にデビッド・リンチ監督作品を連想した。米文学入門のこの作家の記述にあったが、この作家は高みから揶揄することができないので、痛々しいとあるがなるほどと感じる。
2014/12/30
キジネコ
ミス・ロンリーハーツの異名で新聞の「人生相談」を担当する男に、人々は教会の告解の小窓に向かう様にアカラサマな悩みを綴ります。まるで、この世界が煉獄そのものであると、相談者は言います。悲惨を極め、救い難き懊悩の数々と男自身の生活に横たわる問題がシンクロし、キリストゴッコと現実の埋め難い距離の隔たりが突然の終端を迎えます。決着は救いなの?破滅なの?信仰と現実の間で実感出来るモノが少ないために理解が届かないもどかしさもありますが、読後に残った「美しい」印象は、偽善を排そうとした男の正直さ?の余韻かも知れません。
2014/05/18
星落秋風五丈原
どこにも救いのない話。孤独な娘は相談員の仮名で実際は男性。
2022/05/28
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