ヴィルヘルム・マイスタ-の修業時代 (下) (岩波文庫 赤 405-4)
ヴィルヘルム・マイスタ-の修業時代 (下) (岩波文庫 赤 405-4) / 感想・レビュー
syaori
祖父の美術品、初恋のマリアーネ、女戦死、ミニヨンの素性…。これまでヴィルヘルムに絡み、もつれていた糸が解きほぐされていきます。上手く行き過ぎという思いもありますが、こうも見事に美しいとため息しかありません。それにしても、今巻に満ちる「清らかな明るさ」は何なのでしょう。これは、素質もその段階も様々な人々が集まる世界を迷いながらも前へ進む人間、作者がヴィルヘルムに託した理想が到達する場所なのでしょうか。迷誤を重ねる彼をもどかしくも思ったけれど、ヴィルヘルム、手に入れたあなたの「王国」も美しくありますように。
2018/03/09
Gotoran
最終巻。秘密結社「塔」の主宰者、神父から修業証書を授けられたヴィルヘルム・マイスターは、修業時代の終わりを迎え、上巻・中巻でヴィルヘルムと関係があった登場人物たちが、本(下)巻では、彼等が何らかの形で繋がっていたことが明らかにされていく。主人公ヴィルヘルムは、失恋、仲間の死、子供との関係、負傷、等々・・成功し失敗し、気付かされ、何かを失い、(随所にゲーテの示唆深いフレーズを噛みしめながら)様々な経験を積んで人間形成を達成させていく。
2018/07/22
翔亀
下巻にはいって驚きの展開。ゲーテは堅苦しいイメージもあったが、読み手を楽しませる物語の構築法を心得ている。上・中巻で仕掛けられたいくつもの謎がことごとく解かれていく。えっ?そういうことだったの?! 中巻まで何故と思う点が何点もあった。読みが足りないのかとも思いながらも先を急いだ。そしたらゲーテがわざと仕掛けた謎だったのだ。良質な推理小説における伏線の回収ってやつだ。もう一回再読したくなる。■しかし以上はあまりに表層的な感想だろう。中巻までの演劇の世界から一転、下巻は<塔の結社>の世界が描かれる。↓
2020/10/06
ももたろう
最終巻。これまでの疑問が次々と解かれていったが、物語に没入することができず、途中から気持ちを鼓舞して最後まで読んだ。竪琴弾きのアウグスティーンも、ミニヨンも、ナターリアも、登場人物の皆誰しもが何かしらの「悲しみ」を抱えて生きているのが印象的だった。音楽が、絵が、詩が、それらの悲しみを昇華し、人生を美しくするもののように感じた。それ以上のことは語れない。いつか再読せねばならん。『身近なものこそ価値があり、貴重なのだ』という言葉は、ヴィルヘルムがミニヨンや竪琴弾きを大事にしたことと共に胸に刻んでおきたい。
2017/03/13
イプシロン
文学という芸術の根底には優れた構想(プロット)があることを痛感させられた読後感である。建築物に喩えていうなら、主要な柱は何本ありその位置はこことここ、各部屋部屋は機能によって間取りや装飾が異なる。ある場所は陽光がさしこむ吹き抜けになっており、ある場所は丸天井になっていたりと。そして、一見整然と見えないような各要素が、実は美しくも機能的に調和している。本作はそのようは建築的構造美をもった名作だといって過言はないだろう。また個人的には、本著を Bildungsroman(教養小説)と位置づけて批評することは、
2023/05/14
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