ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代 中 (岩波文庫 赤 405-7)
ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代 中 (岩波文庫 赤 405-7) / 感想・レビュー
俊
ヴィルヘルムは、「教育州」と呼ばれる組織に息子を預けて旅を続ける。ある中年男性を主人公にした挿話は面白いのだが、本編との繋がりにミスがあるためチグハグな感じがするのが残念だ。格言集は良かった。これだけ著者の理念を前面に押し出すのであれば、小説以外の表現でも良かったのではないかと思ってしまう。
2015/06/23
てれまこし
本作の主題はどうやら自立した個人が協同する市民社会である。全宇宙を精神に収めた賢者は登場するが何か遠い理想であり、主人公は専門知識をもつ職人たちである。ただ、その市民社会が秘密結社という形で出てくるのである。そして窮屈な旧世界から新天地に移民し、そこにユートピア社会を作るという手順を踏まなければならない。どうもまだ市民社会が未成熟であったドイツでは、市民社会を社会の枠の外に置かなければならなかったらしい。信仰の自由は認められるが、統治体制に対する挑戦は戒められる。自由が全体秩序で統制されるのもドイツ的。
2020/02/11
有沢翔治@文芸同人誌配布中
息子、フェリークスとともにヴィルヘルムは政育州を訪れた。そこではゲーテの理想とする教育がなされている。畏敬の話わ宗教の三段階説は宗教観が垣間見えるだろう。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51521284.html
2021/10/27
tieckP(ティークP)
上巻よりもさらに理念的になる。とりわけ教育州の話は、小説と言われなければただの学校案内パンフレット(それも入学したら理念と現実が恐ろしく違うたぐいの)に見えても仕方がない。やっぱりこの小説は無名の作家としては価値があまりなく、様々な作品を遺し実力を証明したゲーテの晩年の境地(ひょっとしたらアンチ小説)として読んで楽しむべきなのだろう。とりわけ巻末のおまけのような箴言はそうである。
2013/08/18
qoop
〈深く、真面目に考える人たちは、公衆に対して分の悪い立場にある〉 〈もっとも腹立たしいのは、文句の多い観察者と、気まぐれな理論家である。彼らの試みはせせこましくて複雑、彼らの仮説は難解で奇妙である〉 〈原因を熱心に問いただし、原因と結果を混同し、誤った理論に安住することは、きわめて有害であり、この害をさらに増大させてはならない〉 〈弊害を見ると、人は直接それに働きかける。つまり兆候へ直に治療を加える〉
2012/03/12
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