詩と真実 第3部 (岩波文庫 赤 407-1)
詩と真実 第3部 (岩波文庫 赤 407-1) / 感想・レビュー
lily
やはりギリシャ悲劇とシェークスピアに還るよな。ゲーテにも打ち込めるものがなく感動できるものがなく女性を避けた時期があったことは意外だ。自分の素質の中でも探究心が枯れることは考えもしないのに。最も怖いことかもしれない。もし衣食住が確保されていて加えて一生分の本か愛する人の2択しか与えられないのなら愛より知を選んでしまうだろうから。
2021/04/29
Kota
第三部は当時一世を風靡した『若きウェルテルの悩み』執筆の背景がヤマ場のひとつ。自身の失恋に加え、人妻への恋に破れて自殺した友人の報に触れ、下書きもせず一気呵成に四週間で書き上げた、と。運命を受け容れ、友人の自殺という偶発事をも受け止めて、芸術に昇華させるゲーテの巨大な創造のエネルギーを強く感じた。また「正反対のものからもっとも緊密な結びつきが生まれる」として、スピノザに深く影響されたとも語る。まさに正反合の止揚を地で行くようだが、この柔軟性と懐の深さもまた、ゲーテの大いなる魅力の源なのだろう。
2019/08/24
てれまこし
ゲーテの時代にも、若い世代がよく投げかけられた言葉は「君はまだ経験が足らん」である。現実と理想、実践と理論、社交家と瞑想家との距離が開くとこれが人口に膾炙する。だが、この「経験」とは何か誰にも説明できない。宗教体験や恋愛体験など、デカルト主義には切って捨てられ、ロック/ヒュームの経験論では説明できないような「経験」がある。この広い意味での「経験」を統合する原理として「生」という言葉がすでに使われている。詩はそうした「経験」が分析によってバラバラにされず直観的に把握される表現手段。詩と真実とは詩は真実の意。
2020/12/10
有沢翔治@文芸同人誌配布中
ゲーテの自伝、第三部。『若きウェルテルの悩み』の創作秘話が語られます。てっきり自分の経験をもとに書いたのかと思いきや友人の経験を下敷きにしていたんですね。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51521738.html
2021/11/25
中村禎史
ゲーテは敬虔なキリスト教徒だったのだ、と思うが、同時に人間の可能性を神による「予定」よりも強いものと考えており、この点、恐らく当時のプロテスタントからすれば敬虔とは言えなかったことと思う。 自身の文学的才能(構想力、表現力)、将来への可能性に絶大な信頼を置き、努力を重ねることで何事かを為すことが出来る、と考えていた。ルターの功績(新約聖書ドイツ語訳など)を「16世紀に燦然と輝く」と評しており、繰り返し聖書を読み返すなど、熱心なキリスト教徒だった半面、人間の可能性を信ずる、近代の先駆者であったのだと思う。
2014/01/19
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