ウィーン世紀末文学選 (岩波文庫 赤 454-1)
ウィーン世紀末文学選 (岩波文庫 赤 454-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
19世紀末から20世紀初頭にかけて書かれた16の短篇小説を収録。時はあたかも世紀末から第1次世界大戦前夜あたりまで。この時期の文化をリードした街をあげるなら、やはりパリとウィーンがその筆頭にあげられるだろう。ウィーンにはクリムトがいて、エゴン・シーレがいて、街はユーゲント・シュティールの意匠に溢れていた。音楽界もまた当時はマーラーがウィーン・フィルを率いていた。それに比すれば文学界はいささか地味だが、それでもホーフマンシュタールやシュニッツラーがいた。本書は随所にこの時代のウィーンを髣髴とさせるのである。
2014/08/26
Nobuko Hashimoto
今月は世紀転換期の中欧に浸る月間にしているので。拾い読みしかできていないけど一応記録。世紀転換期のウィーン文化を象徴する作家たちの短編集だが、なぜこれらを選んだのだろう、それぞれもっといい作品がありそうだが、という感じが否めない。挿絵に使っている絵はどれもいいんだけど。
2021/03/08
Tadashi_N
世紀末ウイーンに集まった才能の多様さ。
2016/11/06
瓜坊
ハプスブルク帝国の末期のウィーン、他民族に寛容な文化都市で爛熟した芸術の街ってイメージがあるけれど、その時代のウィーンを横に切った断面図のような短編集。先にイメージがあるから、退廃とか耽美とか、全体的な雰囲気はそういう言葉が漂っている。シーレやクリムトの挿絵も相まって。でも一括りにできない多様さ。現代の日本に「終わりなき日常」って言葉があるけど、この時代のウィーンって終焉が避けられない状況で、溜まりに溜まった古からの美の中で燃え朽ちるように生きてる感じがする。
2019/03/18
rinakko
解説にある言葉の通り、“時代を横に切る”とても興味深いアンソロジーだった。一つ、また一つと続けて読んでいくことで、重過ぎず軽過ぎない絶妙な豊かさをより感じやすく、より幅広く堪能できる内容になっている。辛辣な皮肉も、嘲弄、憂鬱、幻想、厭世、優雅に怠惰に滅びゆく貴族の姿も…。頽廃の色濃く、いささか毒が強めな作品が揃っているところは流石だ。
2014/02/09
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