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終戦日記一九四五 (岩波文庫 赤471-2)

終戦日記一九四五 (岩波文庫 赤471-2)

終戦日記一九四五 (岩波文庫 赤471-2)

作家
エーリヒ・ケストナー
酒寄進一
出版社
岩波書店
発売日
2022-06-15
ISBN
9784003247129
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終戦日記一九四五 (岩波文庫 赤471-2) / 感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

時には厳しいヒューマニズムを謳う作品を多く、残したケストナー。当然、ナチス・ドイツから執筆活動を妨害されたが、亡命をしなかった。そんな彼が終戦間際の1945年、抑圧された祖国での生活で見聞した日常を綴った日記が本書である。ナチス・ドイツの敗北後、憧れの象徴(ヒトラー似の口髭)を剃り、知らん顔をして取り繕う大人達の姿は映画『顔のないヒトラーたち』を思い出す。生存の為のその掌返しは理には適っている。だが、罪への葛根を後世に遺したという意味では苦々しい。そして正義の名の下の暴虐も容赦なく、記録されたのが貴重だ。

2022/07/04

ベイス

印象的だったのは5月8日、ドイツ無条件降伏の報に接し、連合国への怒りを吐露した箇所。「私たちの所で死刑執行人が大手を振って歩いていたときヒトラーと手を結んだのは誰だ。ベルリン五輪に選手を派遣したのはどこだ、!私たちではないぞ、偽善者諸君!」一貫してナチスに否定的だったからこそ堂々としたものである。内と外では景色の見え方がだいぶ違うのだろう。いま、良識あるロシア人に世界はどのように映っているのだろう?

2022/08/19

天の川

1945年2月から8月までの約半年間のケストナーの日記。書棚にひっそりと置かれた「束見本」に書かれた覚書を書き起こしたものだ。亡命を選ばず、ナチの監視下で生活を送った彼の観察眼と危険な覚書を残した勇気に畏敬の念を抱く。破滅に向かいつつも戦争遂行のために国民を鼓舞し、抑圧するナチス、チロル地方の農民のよそ者に対する反感、敗戦後の分割統治に対する絶望、強制収容所からの生還者の話を聞いて綴る犯罪者が支配する国の大罪目録。最終行に太字で書かれた「1945年を銘記せよ。」が今現在の世界の状況に警鐘を鳴らしている。

2023/03/23

ケイトKATE

ナチス・ドイツ敗戦直前の1945年2月から敗戦後の8月に渡って書いたエーリヒ・ケストナーの日記は終始冷静である。私が最も印象に残ったのが、5月8日の日記である。この日は、ドイツが連合国の無条件降伏に調印した翌日である。ケストナーは、すでにドイツ人の戦争責任に関して厳しく問うている。また、ヒトラーに協力したことを言い訳する大人たちへ辛辣な言葉が並んでいる。ケストナーがこの日記を発表したのは、第二次世界大戦下の非人道的行為を忘れていけないために発表した。日記の最後はこう記されている。“一九四五を銘記せよ。”

2022/06/30

くさてる

ナチス政権下で察活動を禁止された児童文学作家、ケストナーの日記。単純な悲憤慷慨や告発ではなく、日々浮かんだであろう素直な感情の吐露や生活の記録から、その世界が浮かび上がってくる文章に驚いた。空襲や予備役の招集を恐れ、離れた場所の家族の安否を気遣い、なんとかいまをやり過ごそうとし、生き抜こうとする。このリアル。この生きている空気感。そこにも書き記されるナチスの暴虐の記録。良かったです。

2022/11/12

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