未成年 下 (岩波文庫 赤 614-8)
未成年 下 (岩波文庫 赤 614-8) / 感想・レビュー
Pustota
下巻でまず印象的なのはマカール老人の登場。彼が語る「端麗さ」は素朴だが力強い生き方で、賢しらで軽薄な「多角性」とは対照的。静かな幸福の中に生きるマカールと、確かなものを掴めず精神的に分裂するヴェルシーロフ、二人の「父親」を見たアルカージイはいかに生きていくのか。翻って、自分がどのように生きているのかを考えさせられる。幕引きで語られるこの作品の意図。偶然的な性格をまとめ上げずに、真率に「記録」する。この態度が小説『未成年』の難解さでもあり、他の作品にはない不思議な魅力でもあるのだろう。
2023/12/03
アリョーシャ
以前に読んだときには、終盤でひたすらハラハラドキドキしたけど、登場人物の気持ちは特にわからなかった記憶がある。今回は、ヴェルシーロフの気持ちでわかる部分があった。どんな男性も(女性も?)ヴェルシーロフになる可能性がある、なんてことを思った。
2020/11/07
tieckP(ティークP)
第三部ではいろいろな謎が明かされる。二部までで一番の謎は「なぜこの面白い作品の評価が低いか」であったけれど、その答えも残念ながら三部で明かされる。ありていに言って、三部を書くのに失敗してしまっている。ドストエフスキーはトルストイと違って人間が必死に小説を書いていて、そこがひとの共感を呼ぶのだけど(というあたりはトーマス・マンの受け売りだが)、人間だけに失敗もする。原稿料のためにページ数を引き延ばそうとした印象さえある。語り手が、その場面を語る必要性を繰り返し言い訳しないともたないようでは小説として劣る。
2013/08/02
takeakisky
いろんな感慨を込めたうーむ。貴族的憂愁。無尽蔵の自己愛。その裏返し、または延長としての他者への限りない愛。美への著しい傾倒。総じて非理性的。理性に代わる社会の最大公約数となるものが形式。そのプロトコルに未熟な主人公。形式の外に跳び出してしまった者たちには、このうえなく辛い社会。悪人や食い詰め者すら、ロシアの体系の内にいるが、一方、理性を社会基盤とした場所で感化された者はシステムの埒外に出てしまう。分身。新たな「形式」を期待される未成年。冗談で書いているのか、本気でそう思っているのか?はたまた、読み違いか?
2023/12/29
astrokt2
未レビュー
2009/05/29
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