不幸なる芸術・笑の本願 (岩波文庫 青 138-5)
不幸なる芸術・笑の本願 (岩波文庫 青 138-5) / 感想・レビュー
壱萬参仟縁
Sidisの『笑いの心理』を読んでみると、 笑いは誇り也とある(37頁)。 えがおには、吹顔という書き方もあるのか(116頁)。 ヱガホというものもある。 気質習癖にも、また無意識に背負い込んでいる何ものかが 有る。参州北設楽郡の山間のような静かな土地の、 世間見ずに暮している小民の中に見られるということは、 どうも意味のあることのように思われてならぬ(163頁)。 目に見えない文化資本(D.スロスビー)ともいう。 民俗学への誘い、問題意識が国道151号が走っている 山間地域にあるというのだ。
2014/04/07
belier
笑いをテーマに語ったエッセー集。古典文学などを題材に自由に語っている。こじつけが多いし、論説の文は読みづらいとも思ったが、ときどき共感した。子供がウソをついたらすぐに叱っても信じてもダメで、存分に笑うのがいいとか、反撥できないものを嘲るような風潮になっていて浅はかになっているとか、今でも通用するのでは。上方の「あほ」を一地方の言葉として軽く扱っていたのが印象的。いま「あほ」を誰もが知るのは、テレビのおかげで大阪のお笑いが全国区になったからだろうか。一番面白かったのは、民俗学者らしい「吉右会記事」だった。
2022/02/23
てれまこし
数ある柳田の単行本の中でも特に好きな一冊。笑うことの少ない戦時中の企画らしいが、そんなことにかかわらず、柳田が民俗学の制約から離れて笑いについてのびのびと語っている。例によって日本人のことにしか触れられていないが、日本の特殊性を突き抜けて笑という普遍的な現象について考えさせてくれる。序文でベルグソンの笑い論が批判されているが、理屈だけではなく歴史、それも身近な経験の観察に基づくそれがいかに人間理解に不可欠であるかも教えてくれる。キェルケゴールやベルグソンを読むだけじゃ絶対に見えないヒトの姿を見せてくれる。
2018/02/11
tuppo
いつにもましてわかりにくい。
2013/03/05
狐狸窟彦兵衛
明治から昭和の初めまで、笑う、泣くという感情を真っ直ぐに表現することは憚られることであったのだろう。「貴様!歯を見せるな」「メソメソ泣くな」とか。何か、日本の伝統的な精神だったような。我が少年期もまた、そんな気風の、中だったように思う。そんな中、さまざまな文献を綿密に分析して、笑うこと、泣くことの民俗学的な論考が展開されています。でも、井上ひさしさんの解説「柳田国男への挨拶」にある、「柳田国男の文章はわかりにくい」に納得の一票を捧げます。
2022/11/28
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