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根をもつこと(上) (岩波文庫) (岩波文庫 青 690-2)

根をもつこと(上) (岩波文庫) (岩波文庫 青 690-2)

根をもつこと(上) (岩波文庫) (岩波文庫 青 690-2)

作家
シモーヌ・ヴェイユ
冨原眞弓
出版社
岩波書店
発売日
2010-02-17
ISBN
9784003369029
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根をもつこと(上) (岩波文庫) (岩波文庫 青 690-2) / 感想・レビュー

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Bashlier

5/5 ナチスに迫害され、母国仏を占領され、追われた先の英で34歳の生涯を終えたシモーヌ。彼女が最後に伝えたかったのは「根を持つこと」。人は皆、世界の中で自分の根を下ろす心地いい場所を持っていい。そして、人格を根底から破壊する「根こぎ」は遠ざけなければならない。心震わす論説です。「根付く」ためには職業・文化・地域を通じて自分の価値がはっきりしている必要がある。そのための温かくてゆっくりした準備期間を与えられていい。資本や政党などに支配されず、一人一人がのびのびと根を持つ世界。それが彼女の最後の願いでした。

2023/08/17

姉勤

人はパンのみにて生きるにあらず。ウクライナの不幸をして、日本でも人命だけを至上とする価値観に対して議論を招いたが、大した衝突もなくナチに降伏した祖国フランスの歴史と文明を鑑みて、人間の最も貴ぶべきものを問う著者。震災をはじめとした困難時に耳にする、絆(きずな)は、同じルーツとシンパシーに由来することが多いが、負の面として、絆(ほだ)す、絆されるという、個人の自由の制約、強制も付随する。それも先人の暴力と犠牲によって成り立ったもの。その血塗られた価値でも個を維持するのには、根として必要なもの。下巻へ続く。

2022/05/14

松本直哉

「異郷を自分の家とし、場所の不在に根ざす」と『重力と恩寵』で記したヴェイユが、最晩年の(というにはあまりに若い)この著作では、特定の土地や伝統に根ざすことを人の基本的な欲求として是認する。この変化は何だろうか。異郷に安住しうるのは精神の強靭な人だけだからだろうか。鍵となるのは compassion すなわち他人の苦しみを共に苦しむこと。ドイツに占領されユダヤ人が迫害される満身創痍のフランスの人民の苦しみを、ロンドンで執筆中の彼女は痛いほど自分のものとして苦しんだ。彼らには、そして私にも、根が必要なのだと

2020/10/24

しんすけ

シモーヌ・ヴェイユには、宗教哲学と精神哲学を統合し昇華したイメージを持っているのだが、本書での印象は少しばかり異なっていた。 翻訳の文章にも関係しているのだろうか。カントの『実践理性批判』や、ロールズの『正義論』を、想い浮かべて読んでいることも多かった。 倫理学のサブテキストにしても良いのではないだろうか。 川本隆史の倫理学の本ででも紹介されているから、それもあながち間違いでないだろう。 冒頭から義務の重要さが説かれいる。それは権利をも傅かせるものである。

2023/03/28

おおた

岩波文庫品切れ間近なので急いで入手!占領されたフランスを脱出して、亡くなる直前にこれだけの論考をものす方が倒れた、その人類的損失にまずは悲しみを表したい。彼女の愛国心は、昨今日本で取り交わされているものとは異なる、「根こぎ」への根源的な不安だ。今のわたしたちも国への距離感が取り切れない。わたしたちの忠誠心はどこへ向かえばいいのか、真実の言葉はどこにあるのか安易な解答にぶら下がってはいけない。欧州のキリスト教の普遍さと比べて、日本の宗教はえてして国民感情の制御に使われてしまうのに根本的な教育の差を感じる。

2019/08/29

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