生物から見た世界 (岩波文庫 青 943-1)
生物から見た世界 (岩波文庫 青 943-1) / 感想・レビュー
mae.dat
概念的に理解し難い言葉や、日本語に直接訳せない言葉を造語していたり(それはそれで苦心された点でもある様ですが)で、中々難しい部分もありました。1933年暮れに脱稿され、2005年に翻訳された本書。古くなった知見もありましたが、それも敢えて註も付けずにそのままにしたとの事。益々読み手を選ぶ事になるけど。生物の行動様式を考え、理解するのに有益と言うより、必須の考えなのでしょうね。ヒトとは違う感覚器官を駆使して周り、環世界を如何に感じて行動に反映しているのか、動物行動学を学ぶ際には思い起こしたいと思います。
2023/05/03
KAZOO
もともと1934年に出版されたのですが、知的好奇心を刺激させてくれる本だと思います。昆虫や動物から人間世界がどのように見えているのかを簡潔な文とかなり多くある絵によって説明されています。ハエから見える世界と人間から見える世界など、今まであまり考えていなかったような分析です。
2016/04/22
やいっち
40年以上前に単行本で読んだ。この手の本では先駆的:「甲虫の羽音とチョウの舞う、花咲く野原へ出かけよう。生物たちが独自の知覚と行動でつくりだす“環世界”の多様さ。この本は動物の感覚から知覚へ、行動への作用を探り、生き物の世界像を知る旅にいざなう。行動は刺激に対する物理反応ではなく、環世界あってのものだと唱えた最初の人ユクスキュルの、今なお新鮮な科学の古典。」
ひろき@巨人の肩
國分功一郎氏著「暇と退屈の倫理学」で説かれる「環世界」の出典元。生物機械論では主体となる生物は知覚器官と作用器官からなる。客体の知覚標的を主体の知覚器官が受容する世界が知覚世界。主体の作用器官により客体の作業標識に実行する世界を作用世界。2つの世界が主体の環世界。マダニの環世界は、光覚、嗅覚、温度感覚、触覚により形成され、人間が認知する環世界=環境とは異なる。人間は技術革新により、生物学的限界を超えた知覚器官と作用器官を獲得した。つまり個人の環世界が千差万別で。環世界を広げることが退屈に彩りを与える。
2024/04/25
syaori
本書が見せてくれるのは、生物が知覚する世界。例えばダニの世界では、彼らをとりまく巨大な世界の中からたった三つの刺激だけが「闇の中の灯火信号のように」煌いている。そんな「未知の世界」を窺い知るために示される様々な実験を通して痛感されるのは、私たちはそれぞれの主観に「永遠に取り囲まれている」のだということ。しかも、私のなじみの道は別の人には迷う危険に満ちた未知の道というように、個体の経験によっても見える世界は違ってくる。自分が見ている世界だけが絶対ではない、そんな単純で大切なことを改めて教えてくれる本でした。
2019/07/01
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