鯰絵――民俗的想像力の世界 (岩波文庫)
鯰絵――民俗的想像力の世界 (岩波文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
ゼミの卒論テーマ決めとその周辺研究の把握を兼ねた期末レポートで先生から「周辺研究としてこんな研究もある」とアドバイスされたのでレポート資料として読了。地震の原因として憎むだけではなく、封建社会が崩壊して町民にも貧富の差が出る状況で出稼ぎ町民を救う神として拝まれた鯰。そんな聖邪という相反性を持つ鯰の周辺海としての蛇(竜)からの変換、要石の伝説での役割、瓢箪や弁慶、河童などとの関連性を詳細に記した民俗社会学論。レヴィストロースの神話研究とやデュルケムの社会学、象徴論なども関連してきて脳内への楽しい読み物。
2014/01/23
chanvesa
構造主義の方法を用いての分析だから、民族宗教的な破壊と再生の観点が色濃く、論理的に、そして多くの例があげられている。しかし安政の大地震から幕末までの社会の地殻変動と世直し思想から、鯰絵がヒールからヒーローへ変貌していった理由はあまり触れられていない。そういう領域は政治思想史であろうし、この本でも鯰をはじめとした多くのキャラクターが絵の中で両義的であることが示されているから、トリックスターのシーソーの傾きが触れたということで理解できるのかもしれない。それにしても鯰絵の魅力的なこと!どれもかわいい。
2016/01/23
壱萬参仟縁
新刊棚より。1964年初出。冒頭で柳田国男をリスペクトされる。真正民俗絵画(49頁)。鯰っていうのは憎めない表情してるな。たぶん、アンバランスなほどに目が体の大きさより小さすぎるからなのかもしれない。社会悪、病魔を除く鯰(85頁)。アニミズムにも興味が湧く。霊魂も重要だ(308頁)。瓢箪鯰というのも面白いな。あのカーブは人間的というか、独特である。鯰っていうのは、ぬめぬめしている、ウナギのようなイメージもあるが、あの髭も独特。あの全体的に醸し出す、憎めない存在。地震で放射能漏れの今、柔軟性ある封じ込めを。
2013/08/04
KAZOO
そもそも表紙の絵からして面白いと思いました。中には様々な鯰に関する絵が収録されています。外国人がこのような著書をものにしたことにも感心してしまいます。鯰に関する日本国内の文献を渉猟して明治以前の日本人のものの考え方など民俗学の特異分野の一つの成果であると感じました。
2013/08/25
邪馬台国
何だよこの分厚さは〜、と思ったら夢中になって読めてしまった。民俗学の古典的な本と言っているだけに、かなり細かいところまで丁寧に説明が入っている。鯰絵を読み解く上での日本の昔話や神話などの基本的教養を、無知な自分でも読み進めながら学べてしまうくらい。ありがたや。あとがきにもあったけれど、鯰絵という知的なユーモアをもって震災を受け入れてしまった江戸民衆に対して、震災を悪の位置に置き人間の絆で“対抗”しようとする現代社会は確かに自然からあまりにも乖離してしまっているなぁと思った。
2013/08/12
感想・レビューをもっと見る