問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (岩波文庫 緑 42-13)
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (岩波文庫 緑 42-13) / 感想・レビュー
KAZOO
表題作は二つとも読んだという気はしているのですがかなり若い頃だったのであまり好みではないということですっかり忘れていました。「問わずがたり」はどちらかというと中編で私のような年齢になると身近な気持ちにさせてくれます。あと10作ほど短編が収められています。その他に随筆のような作品も7作収められていて私は荷風の当時の考え方などがわかり楽しめました。
2020/05/03
ehirano1
「吾妻橋」について。戦後が舞台で、その中で懸命に生きることがお涙頂戴、・・・なんてことはなくむしろ飄々と生きる姿が逆に力強さを感じました。功徳を得られたのも、結局は心の置き所故だったのではないかと思いました。
2023/07/21
ワッピー
戦禍の迫る東京で、亡妻の連れ子や女中と同居する売れない画家の密かな欲望「問わずがたり」の他、戦中戦後の世相を背景に男女の心の襞を描いた「噂はなし」「或夜」「羊羹」「心づくし」「にぎり飯」「買い出し」「裸体」「老人」「吾妻橋」の短編および自らも舞台に出た「渡り鳥いつかへる」脚本と随想7編を収録。戦中・戦後の世相や荷風の生活実感が伝わってくる作品群だが、ワッピー的には「にぎり飯」や随想「冬日の窓」の自然描写が印象深い。また自分の作品の再録に絡む版権トラブル「出版屋惣まくり」の嫌みもねちっこくて実に荷風らしい。
2020/02/21
しんすけ
1944~53年に著した作品。創作11篇、随筆7篇を所収。荷風最晩年の作品集となっている。 全体で300頁ほどだが、最初の「問わず語り」が、110頁を占めている。 そしてその「問わず語り」が最も興味深い。 主人公は中年の画家でその一人称で綴られていく。時期は昭和10年ころからだろうか。 妻辰子、妻の連れ子の雪江、そして女中の松子。この三人の女を巡る物語となっている。主人公と辰子は雪江が生まれる前から知己を得た仲である。これが物語に微妙な色合いを添えている。
2021/08/25
さゆき
良かった。語り手が当事者として物語が動いていくものの、常に観察者のような客観的な視点で女たちを見ているところが面白い。心が荒れているとき、荷風の一歩置いた距離感が恋しくなる。
2020/02/08
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