幼なごころ (岩波文庫 赤 N 505-1)
幼なごころ (岩波文庫 赤 N 505-1) / 感想・レビュー
NAO
少年少女を主人公とした10編の短編集。少年の話4つは、名前は違うが同じ少年の、8歳から高等学校入学前の夏休みをすごしている少年と、4つの年代が描かれている。貧しい美少女に憧れるブルジョアの少年。繊細な言葉で綴られた、少年少女時代のちょっとした心の揺らぎ。それは、木漏れ日の下のかすかな光の揺らぎにも似ている。そういった淡い思いをいろどり、つつみこむような、美しい自然描写。そっと宝箱の中にしまっておきたい大事な話。
2020/05/23
syota
読友の方のレビューに触発されて読む。20世紀初頭にフランスの作家ラルボーが書いた短編集だ。今年何冊か読んだラテンアメリカ文学が荒々しいまでの迫力と熱狂で読み手に迫るのに対し、こちらはまさに正反対。彫琢の限りを尽くしたガラス細工のように繊細な作品が並んでいる。大半が子どもの世界を描いているが、単に詩的で洗練されているばかりでなく、子供ならではの一途さや残酷さ、打算、苦悩、孤独などを、透徹した筆致で淡々と描いている。月並みな表現だが、”フランスの薫り”に満ちた小粒ながら珠玉の一冊だった。ただ訳文には不満あり。
2020/11/03
壱萬参仟縁
1918年初出。「ぼくの真の<<生きる自由>>は勉強にこそある(略)それに勉強が、あの深い感情から、あの大きな友情からぼくを遠ざけることはない」(190ページ)。つくづく学問は必須だと。大学で自由に学ぶこともだが、学校を出て自由に学ぶことこそ向学心を充たせるのだと思う。「人生に踏み入る前、もしかしたらそれは明日かもしれないが、ものうげな葉むらに隠された奥庭で夏の日々を過ごしていたあの赤い日の光のことを、ちょうどだれか人のことを考えるときのように思い出してほしい」(290ページ)。人生も折り返したが初心で。
2013/02/09
ラウリスタ~
玄人好みの小説といった感じ。カポーティの短編集と似た雰囲気。いや、ダブリナーズに似てるか。ジョイスの訳者としての方が有名な人物。蔵書が2万5000冊っていうのがすごい。そのうちどれだけ読んでたんだろう。
2010/09/23
きりぱい
ジョイスの最初の仏訳者だというのを他で読んで。ジッドも好んでいたそうなのだけれど、そのジッドに献じられた「包丁」が割とよかった。ちょっとひねた8歳の男の子の恋にドキッとさせられ・・。他には、寄宿学校で少女がむにゃむにゃむにゃ・・と、ひと時の恋情を振り返る「ローズ・ルルダン」や、授業料を払えなくて学校へ行く振りをして時間をつぶす「ラシェル・フリュティジェール」辺りがよかったかな。何というか、そんなにいいとも思えなかったのだけど、美しく見えてそれだけじゃない、子供目線の奥深さが感じられる短編集ではあった。
2011/08/04
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