A.O.バルナブース全集(下) (岩波文庫)
A.O.バルナブース全集(下) (岩波文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
「庶民の女は野暮だよ。aの音すら満足に発音できないし、普通の生活に縛ろうとするじゃないか」と言い、修道士の生活に憧れるのも結局は金があってこそ、言えれる立場の主人公とは相変わらず、絶対に気は合わないなと確信しました。でも自由な旅人として生涯を全うするという事は羨ましいものもある。中編である「秘めやかな心の声・・・」は美しい蜜月旅行の情景と共に、男女の心の移ろい、分かり合えなさ、それを増長させる不釣合いな愛の盲目性による自己完結、断絶の予感と緩慢な諦めが見事に表現されていて胸を打つ。
2018/01/02
壱萬参仟縁
上巻に続き、“MON PLUS SECRET CONSEIL...”邦訳『秘めやかな心の声……』1923年が続く。解説によると、内的独白(396頁~)。J・ジョイス『ユリシーズ』にも似るか。第3の手帖で、文法書、辞書に呼ばれて、セルビア語、ブルガリア語、ロシア語の学習に乗り出そうとしていた(36頁)。世の中に富ほど美しいものがあるだろうか。精神を物質化し、街の生活に、人間の内面の光を投げかける(58頁)。一度読んだだけでは足りない、よく知っていなければならない本があるものだよ。
2014/08/11
ラウリスタ~
下は、『日記』の後半と、内的独白の手法を使った中篇。中篇の『秘めやかな心の声・・・』はジョイスとの親交と、ジョイスに薦められたデュジャルダンの『月桂樹は切られた』の読書による影響が大きいそう。内的独白形の小説はなかなか読むのがつらいが、この場合はバルナブースの日記とこんがらがってさらに混乱する。しかし、ラルボーが面白いことは明らか。ちゃんとフランス語で読んでおきたいところだけれども、これは難儀だろうな。
2014/05/10
Fumoh
下巻になると、よりいっそう内省の声が強くなってくる。旅人というより、漂泊者的精神に近い。ただし彼の思想は、自身の「知識人・通人」としての境遇を離れていかない。それはいったい何のための独白だったのか。いささかは、自分を救おうとするため、という意識であっただろう。であるから、あとがきに書かれているとおり、詩以外は批判的に受け取られた、としても仕方ないだろうと思う。それは何割か、自己弁護の書であるからだ。そして同時に他者非難の書、でもある。時代精神を映した書物、としては一定の価値がある。
2023/11/19
シンドバッド
『秘めやかな心の声…』が収められている。 上巻に引き続き、大変、興味深く読んだ。
2015/02/17
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