コンプレックス (岩波新書 青版 808)
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コンプレックス (岩波新書 青版 808) / 感想・レビュー
夜間飛行
心の中に分離が生じ、思わぬことをしてしまう、その原因がコンプレックスだという。いわば自我の外から来る意志、私の中の別の私のようなもの。それは強い感情を伴って自我を脅かす。だがユングはそこに人格を発展させる働きを見出した。その際、人間関係の布置が重要になる。家族や社会の中にいるトリックスターの破壊力が新たな関係を生み、コンプレックスは解消へと向かう。私が夢分析の先生にいつも言っていること「治るのが今の自分の否定なら治りたくない」…固く結ばれた紐のようだと思うけれど、この思いを著者もわかってくれているようだ。
2024/02/29
やすらぎ
自分の意思は本人が考えているより弱い。意思とは異なる行動が生じて人は悩む。私がわからない。…正常と異常の壁は意外と低い。コンプレックスを感じて逃避する場面もあるが、信頼する人に会えば、すぐに落ち着きを取り戻す。意識は無意識より狭く、感情と無意識は繋がり、意識は不自然を産み出す。不安に片寄りすぎると心が抑圧され、自我は消えていってしまう。その解消には大変な努力を必要とする。多くの失敗を繰り返す中、数少ない成功を支えに生きていく。…コンプレックスは誰にでもある。不安や夢と上手く付き合い、自らを受け入れていく。
2019/03/06
ばんだねいっぺい
腹が立ったり、いてもたってもいられなくなる時、自分の内部のコンプレックスが仕事している。 自我を強化し、コンプレックスと向き合って、それと同化していくこと。そして、その後元型と、これ自体が物語性を帯びていることが面映ゆい。
2018/06/26
小木ハム
コンプレックスという言葉を初めに使用したのはスイスの心理学者ユングのようである。本書はその学派に所属された先生の作品。私たちは誰でも何かしらの欠乏感を抱えており、そのことがマイナスに働くこともあるが、欠けた穴を埋める為に別の分野で努力をすることもある、ユングはそう捉えていることがわかった。「コンプレックスを”同伴者”として対話の相手になるまで人格化する時、それは生活に輝きをもたらすものとなる。」という考え方が素敵です。創作物ではよく影の自分との対決が描かれるが、あれもコンプレックスの象徴なのだろう。
2023/07/26
昭和っ子
「今さらこんな事やったら人が笑うかも…」とか、「無駄かも…」とか思って、自分を押さえ込んで何もしないと、抑圧したものはコンプレックスと化し、結局はつまらない「近所迷惑」を引き起こす。だから、自分がやりたいと思ったものは、人の目など気にせず、とりあえずできる限り何でもやっちゃえ!という河合センセイの言葉を、これからも人生の指針としよう。また再読するであろう。
2017/02/17
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