日本語をさかのぼる (岩波新書 青版 911)
日本語をさかのぼる (岩波新書 青版 911) / 感想・レビュー
夜間飛行
私は著者の講義を受けたことがあり、本書の1/4要約を課された思い出がある。初めの方でウヒ、ニヒ、ハツの差異を例をあげながら論じ、そこから語の意味とは、《類似する意味を持つ周辺の語と相互に限定し合いながら、各自がその独自性によって存在している》のだと結論づける。この考え方は本書の主題であるのみならず、もしかしたら岩波古語辞典を編むにあたって著者が最も苦心した点ではないか思う。古い言葉の位置に新しい言葉の勢力が張り出し、語彙というネットワーク全体が変遷していく有り様こそ、著者の伝えたかった日本語の実相だろう。
2018/01/08
sabosashi
日本語のことはよく知ってます、プロですから、なんてはったりをかますことが得意で、厚顔無恥さでは他人にひけをとらないわたしであるが。 高校の古典科目的教育では、ニホンの古典は嫌いではなかったが、いったいどこまでわかっていたのかおおいに疑問にも感じる。 要は、お座なりなことばであるが、学究心ではないだろうか。 わたしたちが何気なく用いているニホンゴ。それはどんなダイナミズムで動いてきたのか。 そのへんの好奇心なくして、古典といまのニホンゴのアナロジーについて考えようなんて気はおこらないであろう。
2019/11/13
はちめ
大和言葉について考える際に極めて参考になる。大和言葉を語根に分解していくと、かつて日本列島に暮らしていた日本人が様々な大和言葉の語根をつなぎ合わせて多くの言葉を創り出していったのだということが良くわかる。しかしながら、5世紀以降漢語が流入すると新しい概念は漢語で表現するようになり、明治以降はいわゆる外来語が新しい言葉として取り入れられる。大和言葉による新たな言葉の創出は行われなくなってしまう。そこで、例えばサステナビリティを持続可能性ではなく、長続きできるげというのはどうだろうか。案外行けるかもしれない。
2020/12/19
kaizen@名古屋de朝活読書会
おきな(おとこ)とおみな(おんな)で、「き」がおとこで、「み」がおんなを意味したという。きとみの次が、「お」と「め」だとのこと。 おんどり(雄鶏)とめんどり(雌鳥)の例を示している。 日本の古典を読む際に参考になる情報が満載である。 P212に、「従来の比較言語学的的報告の少なからぬ部分は、日本語への浅い把握にもとづく誤りに陥っている」という記述がある。常に自戒の念を持って接する必要があると思う。 アイヌ語「カムイ」を日本語から取り入れたという説明193ページhttp://bit.ly/10CJ7MZ
2004/07/05
寝落ち6段
日本語の最小単位はなんだろう。もともと文字の無い言葉だった日本語は、漢字を受け入れ、語彙を次々に増やしていった。その中で、一つの言葉が同音異義語や音が似ている言葉に枝分かれしていった。その最小単位、言葉の先祖はなんなのか、大変興味深いことが書かれている。初っ端の「男と女」から始まり、古語の祖先へと遡っていく。探究心が強い方にはお薦め。ただし40年前の本。
2013/09/06
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