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羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

作家
加藤周一
出版社
岩波書店
発売日
1968-08-20
ISBN
9784004150961
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羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

評論家加藤周一氏の自伝。「日本語で書かれた最も美しい散文」と評された文章が見事。華麗なレトリックを避けて、出来事や事物に寄り添うかたちで言葉が綴られていく。淡々としているとはいえ、詩情が滲みだしてくる文章であり、昭和初期の東京の山の手の知識人の生活が、まるで映画を見ているようにくっくりと浮かび上がってくる。加藤氏の時代と距離を置く醒めた視線が印象的で、これは加藤氏が理系の教育を受けたところから来るのかもしれない。閉塞感が漂う当時の日本で精神的な自由を保とうとする東大の仏文科の面々の描写が一番魅力的だった。

2013/09/05

おさむ

岩波新書のロングセラー。その題名は知っておれど、実は読んでいなかった名著をこの機に読んだ。なるほど、戦前世代の山の手育ちのエリートはかくありなむ。まさに「君たちはどう生きるか」のコペル君の世代ですね。戦前から終戦迄の日本社会の一断面を描いたという価値はあるが、現代に通じる普遍性では疑問符がつく。なぜ読み継がれているんだろう?コペル君は昨年、見事に漫画や復刊でリバイバルしたけれど、本著はそれは無理だろうなぁ。

2019/01/08

奥澤啓

加藤周一。1919年9月19日生まれ。2008年12月5日逝去。享年89歳。戦後を代表する知識人である。和漢洋の文学、哲学、歴史等への深い教養に裏打ちされた旺盛な文筆活動は大きな影響を与えた。『羊の歌』(上)は加藤の生い立ちから敗戦までの日々が描かれる。その文章は簡潔にして明晰、イロニーに富み、多少シニックではある。「前世紀の末に、佐賀の資産家のひとり息子が、明治政府の陸軍の騎兵将校になった」という冒頭の一節は、サルトルの自伝『言葉』の導入部から影響を受けていることは、たびたび指摘されてきている。

2015/02/22

さきん

戦後を代表する知識人である加藤周一氏による随筆。経済的に恵まれた知識人としての視点から戦前、戦後の自身と日本を振り返る.知識やそれを元に組み立てる能力はすごいと思った。戦前、戦後の日本を非常にシニカルに見ていることもよくわかった。しかし、いかにも典型的な知識人といった感じで、魂あるインテリ、エリート、士(サムライ)という風には見えなかった。当時の知識人として日本が戦争に敗れるのは当たり前という共通認識にも関わらず、負ける終わりの見えない戦争に突入した要因こそ、戦後の知識人は考えるべきではないだろうか?

2017/01/18

kazuさん

加藤周一の幼年時から終戦時までの回想録。東京大学で医学を学びつつ、同大文学部でフランス文学の講義を聴きながら、徐々にフランス文学を含む欧米の文学に傾倒して行った、心の軌跡が描かれている。知の巨人と言われていて、近寄り難く思われていた著者を、かなり近くに感じることのできた一冊であった。

2020/12/26

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