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続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)

続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)

続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)

作家
加藤周一
出版社
岩波書店
発売日
1968-09-20
ISBN
9784004150978
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続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690) / 感想・レビュー

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奥澤啓

加藤周一を読むたびに気づくのが極端にカタカナ語の使用をさけていることだ。カタカナ語の濫用はきたない。それは終生かわらぬ加藤の文章作法であった。日本語で表現できることは日本語で表現すべきである。「テニスコート」ではなく「庭球場」といい、「タクシー」ではなく「乗合自動車」という。それは母語への愛情の発露にほかならない。またいくつもの外国語に通じていた加藤は、外国語をカタカナ語として用いることが本来の意味とはことなる相を日本語の中で持ちはじめることを熟知していたからでもある。今の日本はどうか。目も当てられない。

2015/01/10

奥澤啓

『羊の歌』(続)は敗戦から日米安保条約改定までが描かれる。原爆投下後の広島での日米合同調査団としての活動。京都の女性との断章。血液学専攻の医学生としてのフランス留学。欧州の中世建築や美術との出会い。妻となる人との邂逅。帰国。親友との死別。そして戦後の日本の大きな節目であった安保条約改定。正続を通じて点描のように何人かの女性が登場する。その登場のさせかたに、そうとうの企みがあるように私には思える。27歳の時の最初の結婚にふれていないのはなぜか。私事への好奇心ではない。意図的な欠落を感じるためだ。

2015/02/24

さきん

戦後から安保改訂までを知識人の視点から振り返る内容。医師の仕事と文学、評論、政治を両立する能力はすごいと思った。しかし、やはり典型的な戦後の知識人といった感じで、特にノブリスオブリージュもなく、好きに世の中を皮肉って生きているなと思った。安保に関しても、納得できないところが多々あった。もちろん憲法をないがしろにしている点は問題だと思うが、憲法が国民の規範を代弁しているのか、現実と理想の両方から乖離していないのかというところから考える必要があるのではないだろうか?

2017/01/18

あきあかね

 著者の自叙伝であり、魂の遍歴である。終戦直後の焼け跡の描写は、当時の日本社会とそこに生きる人びとを活写していて、その熱量が伝わってくる。「焼け跡の東京には、見せかけの代りに、真実があり、とりつくろった体裁の代りに、生地のままの人間の欲望がー食欲も、物欲も、性欲も、むきだしで、無遠慮に、すさまじく渦を巻いていた。···私が乗合の窓から眺めた東京の市民の表情は「虚脱状態」で途方に暮れているどころか、むしろ不屈の生活力に溢れていた。」 終戦後まだ2ヶ月の頃には、医師として被爆の影響の調査のために広島に赴く。⇒

2019/03/14

kazuさん

1945年9月の終戦時から、1958年10月に開催されたAA作家会議の頃までが記載されている。パリへ留学、帰国し、そして医学研究を捨てた。加藤の言葉によると "非専門家の専門" になろうと志した。パリに留学して多数の芸術家と交流してから、医学研究者として血液学の研究を行っても、詩作に代表される文学は極められないと考えるようになった。パリを拠点にニース 、フィレンツェ、ヴィーン、ロンドン、オックスフォード、マルセイユなど欧州各地を訪れているが、終戦後の各地の状況が素晴らしい文章で興味深く綴られている。

2021/01/21

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