アメリカ感情旅行 (岩波新書)
アメリカ感情旅行 (岩波新書) / 感想・レビュー
さっと
いまから60年前のおよそ半年間にわたるアメリカ滞在記。ロックフェラー財団の留学生として著者が滞在した地はテネシー州ナッシュヴィル。人口20万人。北と南の境界州。交通の要衝。南北戦争の激戦地のひとつ。と言われても読者もピンとこないし、著者だって「アメリカを見るになんでわざわざこんなところに」と言ったり言われたりで非常にふわふわしている。トリトメガナイのである。しかしながら、このおもしろさはなんだろうか。外国に身を置いて過ごす日々と自然体で綴られる日記調の記録。緊張と緩和。彼らがとても身近に感じられる。
2022/02/21
にゃん吉
著者が、1960年~1961年の半年間、テネシー州ナッシュビルを中心として、アメリカに滞在した際の記録。小説家の目(というより、著者の個性的な視点というのが正確かもしれませんが)が日常生活の中から捉えたアメリカ社会、アメリカ人の姿(人種差別、北部と南部の意識、信仰等々)や、言語の壁、異文化に身を置く鬱屈とした心情といった著者自身の内面が、一流の筆致で描写されています。個人的には、なかなかの名著ではないかなと思われました。
2020/07/11
イエローバード
半世紀以上前のアメリカ南部地方への旅行記。とにかく文章がうますぎて涙が出た。ビフテキとか、今や死語となった言葉も懐かしい。英語が聞き取れずにおどおどする様子は、自分がロンドンを個人旅行したときとまったく同じで、「小学生程度の知能で過ごした」というのはホントそのとおり。読みながら泣き笑い。ケネディ就任演説を滞在中に聞いたとのくだりは、トランプが大統領就任目前の今、アメリカの来し方行く末を考えさせられた。それにしても一緒に渡米した奥さんには感服した。たまに出てくる彼女の言動が最高でした。
2016/12/10
hyoshiok
二子玉川蔦屋家電、海外旅行、アメリカの棚にあった。アメリカ遊学記、都留重人、とあわせて買った。1960年頃に米国留学した紀行文。当時はまだ黒人の公民権が確立していなかった。XIII章「テント・シティーの周辺」が強烈だった。著者が行った街は、黒人に投票を許していない街の一つだ。そこの有力者が著者にその説明をする。「黒人が7割、白人が3割、彼らに選挙権をあたえたら、市長も市会議員も全部が黒人で占められてしまう。それでは町の政治は成り立たんよ」(中略)「彼らにはそれだけの能力がないからさ」(188ページ)
2018/03/30
うな
予想以上に面白かった。40代の著者が公民権法制定前夜の中西部に滞在した際の「感情」記録。タイトルを「感傷」と読み違えたいたが、読み進める中で、さまざまな「感情」の海に翻弄される著者の姿に自分の経験が重なっていく。アメリカ人とは不思議な人たちである。
2011/08/13
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