哲学の現在: 生きること考えること (岩波新書 黄版 2)
哲学の現在: 生きること考えること (岩波新書 黄版 2) / 感想・レビュー
ころこ
科学や主体といった西洋近代から生じた問題を指摘し、ポスト近代への柔らかな知への思考を考察する70年代の本。哲学者や哲学用語を使っていないことに特徴がある。前半は「言葉は思考の肉体だ」と言うように、哲学であるが哲学をする動機に目を向けている点で文学に近い。後半は集合知としての神話や共通感覚としての祭りなど、人類学に近いのではないか。内容は平易だが、なかなか議論が進まないため、粘り強く読む能力が試される。
2023/03/25
masawo
人名や専門用語に頼らず自らの言葉で哲学するというテーマだが、どこまでが先人の思想でどこからが著者独自の思想なのか分かりにくかった。身近な例えを使った叙述は読みやすく感じたが、章ごとの論点がバラバラで、結局一冊を通じて何が言いたいのか把握できず。著者が書いた同じ岩波新書黄版の『術語集』と併せて読むと参考になる気がした。
2022/03/30
うえ
「社会のなかで私たちを互いに交わらせ、結びつけているもの、その原理になっているのは…「必要」あるいは現実的な「欲求」である…人と人とのこのような結びつき方が歴史上ではっきりと理論化してとらえられたのは、ヨーロッパの近代自然法の考え方によってである…自己保存や自己拡張の欲求を人々がつよくもった「自然状態」を想定した上で、彼らの間のそのような欲求の衝突を合理的に調整するものであった。とくにホッブズでは、その「自然状態」は…誰ももはや自分の身を守ることのできない、全体として自己破壊的な場としてとらえられた」
2015/12/23
ビタミンちゃん
これは一体、なんという名著だろうか!この本は従来の硬く難解な哲学書ではない、著者”中村雄二郎氏”の、彼の言葉で書かれた、極めて明快な哲学書である!あとがきを読むとなるほど、彼の本書で目指した意図が解りやすく書かれていた。難しい引用は殆ど全く無く、誰にでもわかりやすく、それでいて深い叡智を含んでいる。その内容はどれも上質で、これは他の読者にも自信を持って推薦できる。折に触れて再読する日も、近いだろう。
2010/12/05
murumy
ある程度の哲学の基礎がないと語彙的に厳しい章もあるのは確かである。しかしこの本は哲学初学者に対し多くの問題を提起してくれると共に、基本的な考え方を分かりやすく解き明かしてくれる。この本を礎にして自分がもっと知りたい内容を深めていく手がかりになるような本である。個人的には「Ⅳさまざまな知」の章に於いて非常に有用な知見を得ると共にさらに学びたいという意欲が湧いてきた。哲学を学んだことはないけれども、興味を持つ読書人にはかっこうの一冊といえるのではないだろうか。
2011/01/20
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