子どもの宇宙 (岩波新書 黄版 386)
子どもの宇宙 (岩波新書 黄版 386) / 感想・レビュー
匠
子どもに限らず、人の心の中は宇宙のようだと常々想う。同じものを観たり読んだりして感じたことを似たような言葉で表したとしても、心の中は様々、人それぞれ。子どもの場合、大人より経験値が少ない分、その宇宙は想像力の豊かさでさらに広いのかもしれない。共感する部分、ハッとさせられた部分、色々あったが、特に「子どもと死」と「子どもと秘密」についてが読み応えあった。また、子どもの気持ちを例に挙げるために本書に登場する数々の児童文学、既読のものも未読のものも片っ端からピックアップしてあらためて読んでみたくなった。
2014/12/05
うりぼう
今から23年前の新書。その時代をテーマにしながら、少しも色褪せず、今こそ必要なものと感じさせる河合節は、人間の本質をつき、上滑りする社会・人間関係に警鐘を鳴らす。子どもの宇宙があり、大人になると宇宙を失うのか。大人は、宇宙を心の奥底に秘めることで社会と妥協する。上手な秘め方の仕掛けが失われるとともに、宇宙を突如、むき出しにする成人が増える。橋本治氏の一人前になれない人である。「家族・秘密・動物・時空・老人・死・異性」をテーマに現実と別世界に宇宙は広がる。大人の諦観と、子どもの宇宙を失わない存在でありたい。
2010/11/04
藤月はな(灯れ松明の火)
子供の、見て聞いて感じて捉える世界は無限に広がっている。それは大人の捉えている世界を変えうる力すら持ち得ていることが多い。だけど「皆、先生や大人のいうことを聞いて同じようにできなければならない」という教育によってその世界を壊してはいないか?私は、本を読むことを「自分の世界が広がること」だと思っている。「子どもと秘密」、「子どもと老人」の所がグッときました。そして「私もいつも構われる弟に嫉妬して祖母の家におもちゃを抱えて家出したっけ・・・」など、幼い頃のことも思い出しました。
2015/01/26
よこたん
誰にも、子どもだった頃がある。頁をくる毎に、なんとなく忘れたつもりになっていた、自分の子どもの頃のあれこれの記憶がよみがえってきて、懐かしい気持ちと心の底をえぐられるような重苦しさがないまぜになった。家出もどきの行動、誰にも明かさないと決めた秘密ごと、とにかく怖くて仕方なかった死に関わること…ずっと引っかかっていた思いが、本の中でわかりやすく語られていた。「子どもが成長していく過程で通る、ごく普通のことなんだよ」と受けとめてもらえたようで、気持ちがほんのり軽くなった。引用されている児童文学にも心惹かれる。
2016/08/11
Gotoran
心理学者の河合先生の著書、奥が深い、子供の広い宇宙を知ることで、大人の狭まった宇宙に気付く。子供の宇宙を知ることは人間の本質を知ることにも結び付く。
2010/04/29
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