臨床の知とは何か (岩波新書 新赤版 203)
臨床の知とは何か (岩波新書 新赤版 203) / 感想・レビュー
紫羊
知人から回ってきた本なので頑張って読了したが、正直理解するのに苦労した。最初は霧の中を進むような感じだったが、2章の途中から著者の言いたいことが何となく伝わってくるようになった。とはいえ、腑に落ちるというようなレベルではなく、力量不足を痛感。
2014/01/04
風に吹かれて
<普遍性>、<論理性>、<客観性>という近代科学の原理のもと、人間社会は、いろいろな成果を得てきたが、<個々の場所や時間>、<対象の多義性>、<身体性をそなえた行為>という大きく経験に依拠する言わば<臨床の知>と呼びうるものに目を向けることの意義を説く。1992年刊行であるけれど、その視点は今日重要性を増してきていると思う。ビッグデータやAIなど、さらに社会に大きく影響してくるのだろうけど、何かが納得できない感じを否定しきれない。科学で捉え切れない個々の在りようを広く包摂する社会を想う。
2018/07/30
どらがあんこ
「経験はどこまで経験なのか」とたまに考えたりする。本を読むことは?理論は?それとも現場、生身で触れたものこそがすべてなのだろうか? 理論と現実のズレから出発し、近代的な知の枠組みを抑えつつ、新たな知の可能性を本書は示してくれる。いかに普段物事を図式化して見ているかと反省する良い機会になる。 考えてみると本を読むことは受動(=パトス)であり、同時に能動である。読むこと(見ること)によって頭のなかで結びつける。知によって潜在的可能性をもった人間(=自己)の姿を描き出すのだ。
2018/07/24
さえきかずひこ
著者の言う"臨床の知"は最終的に医療や生命倫理についての知のあり方への思考へと向かうのだが、その前段階として展開される1〜4章がハイコンテクストかつハイブロウな文章の構成で読みごたえがあった。というか、読み進めるのに苦労した。中村がイリイチの議論を援用して、病院や学校における価値の制度化について指摘する結論部は興味深い。それにしても、大学受験の現代国語の問題に選ばれそうな生真面目な文体が印象に残った。新書という媒体には適切なような気もするけれど、主題が展開される5〜6章は頗る平易なのでラクラク読めます。
2018/05/05
ゆう。
僕にとってはとても難解な内容でした。科学に基づいた近代知からの疑問から人間の多面性を重視した臨床知を提示しています。大切な視点も含まれていると思うのですが、経験主義的で客観性の乏しい臨床知になっているように感じました。近代知を深めるという対立軸として臨床知を提示したため、経験やパトスの知が、著者の問題意識とは逆に狭くとらえられてしまうのではないかと思います。でも、問題意識は大切な視点だと思うので、その視点に学びつつ、臨床知とは何かを問いていこうと思いました。
2014/03/13
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