当事者主権 (岩波新書 新赤版 860)
当事者主権 (岩波新書 新赤版 860) / 感想・レビュー
さぜん
「社会学をつかむ」の参考文献として読む。社会的弱者が当事者として活動することで社会が変わる。主に障害者の自立生活運動の誕生からその歴史が述べられる。当たり前の事が当たり前でなかった。誰の為のサービスか?当事者運動は社会通念を変え、社会そのものを変える。様々な差別をがない社会を作り出すのは当事者主権を行使すること。当事者が声を上げ運動を起こし、連帯することが必要なのだ。
2021/06/09
おたま
「当事者主権」は耳慣れない言葉。ここでの「当事者」とは、現在の状態を、こうあってほしい状態に対する不足と捉え、そうでない新しい現実を作り出す主体であり、それが当事者となる。「当事者主権」は、その当事者が単に社会からのパターナリズム(温情的庇護主義)にからめとられず、自分の精神と身体に対する自己統治権、自己決定権をもつものとする。私が私の主権者である、私以外の誰も(国家も家族も専門家も)私が誰であるのか、私の必要が何かを代わって決めることはできないという立場の表明である。
2023/04/15
浅香山三郎
当事者主義とか当事者運動といふ言葉を、れいわ新選組のお二人の議員が当選してから耳にするやうになつた。どういふ運動なのか勉強するつもりで、前から積ん読になつてゐたこの本を読む。誰かに権利運動を代行して貰ふのではなく、「自分のことは自分で決める」の精神で障害者の介助の制度的充実が勝ち取られてきた経緯を中心に、介護保険法と障害者支援制度が何故統合されなかつたか等、具体的な闘争事例から紹介。第8章「当事者学のススメ」は、自己決定を基盤に置く様々な活動の社会的意義を説いて示唆に富む。
2019/12/17
kenitirokikuti
〈障害という属性はあるが、障害者という人格はない。同性愛という行為はあるが、同性愛者という人格はない。〉〈自立生活運動では「障害は個性だ」という言い方をしてきた。アメリカでは、障害はattributeと表現されていたのが、「個性」と誤訳されたのかもしれない。だが、「個性」とは人格をあらわす用語でもある。…障害は人格ではなく、「属性」のひとつにすぎない。attributeは「個性」でなく「属性」と表現すべきであったろう。〉(第3章)。自由な中産階級の思想である(このパートは上野氏だと思う)
2018/08/18
きいち
先に「ケアの社会学」を読んだのでどうするか迷ったが、読んでよかった。障害当事者である中西の活動を通じ、当事者運動が達成してきたこと、残されている課題がよくわかる。活動の過程ではおそらくは強烈な憤懣や怒りがあっただろうに(自分がもし障害者になり医師の独断で復職先が決まるとしたら・・)、現状を分析し相手の「善意」を認めたうえで順序正しく闘っていく、その冷静さに敬意を感じる。お金を介在させることで対等な関係が生まれるという考え方も、自分たちで資格を作って運営の実績を作る…どれも、我々すべてが見習いたい姿勢だ。
2013/03/04
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