カラー版 ベトナム 戦争と平和 (岩波新書 新赤版 (962))
カラー版 ベトナム 戦争と平和 (岩波新書 新赤版 (962)) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
著者の石川文洋は戦場カメラマンではあるものの、沢田 教一や一ノ瀬 泰造とはかなり違ったタイプであるようだ。彼らは文字通り戦場の最前線に飛び込んで写真を撮り、そして戦場に散って行った。一方の石川は政治的状況や社会的なものを含めたコンテキストの中に戦場や戦闘、そして戦争そのものを位置付けているのだと思われる。したがって、ここにはいわゆる迫真の写真というのはないが、それに代わって銃後の現実が静かに物語られている。すなわち、ホットで"動"の視点とクールな"静"の視点との違いと言ってもいいだろう。⇒
2021/04/26
やすらぎ
どの国の子どもも、健全な家庭に育ち、友だちと遊び、学校で勉強する権利がある。父親は戦死し、戦場となった農村地帯では水田や小川で遊ぶこともできない。爆弾砲弾銃撃によって大勢が傷つき亡くなる。子どもの夢と将来が大人たちによって奪われていく。…私を見つめる少女がいた。25年後にその村を訪ねると、心に深い傷を追ったまま強く生きていた。…ベトナムを追い続けた石川文洋氏。笑顔が素敵な人々の悲しみ、絶望と叫びを記す。本書最後の希望に救われる。村人たちの目線で撮影された数々の写真と文章は争いの残酷さをそのままに記録する。
2021/09/04
テツ
友人にベトナム人がわりといるのでベトナムには親近感がある。世界が二つのイデオロギーに割れそうな時代に大国のくだらないメンツのために戦争に巻き込まれたベトナム。勝ちも負けもない泥沼のような戦い。誇りをもち戦い抵抗し続けた彼の地には未だに戦争の爪痕が残る。死にたくない人間が殺される。最大の自由の行使である生きる権利を理不尽に奪われる。戦争はしちゃいけない。どうしたってしちゃいけない。殺されたくない人間を殺してはいけない。
2017/10/21
JADE
ベトナム戦争の発端から終結30周年までを、写真を添えてわかりやすく解説してくれてる。なるほど、そういうことだったんだと、今さらながらに納得できたことも多かった。戦争中のむごたらしい写真には目を覆いたくなったし、枯葉剤の後遺症に苦しむ子ども達は可哀そうでしかたなかった。それでも、戦後30年、復興した街を闊歩する若い女の子の華やかな姿や、子ども達のはじけるような笑顔に救われる思いがした。 ☆4
2024/03/27
Y田
◆ベトナム戦争から2005年頃までの期間、カメラマンの筆者がベトナム現地で見たものの記録。この方、ベトナム戦争中は南にも北にも行き、又その後の対カンボジア、対中国戦争の時も行っている。…凄いな。◉半分程が写真となっている。農村や町の日常を写しているものから戦場となり過酷な状態を写しているものまで。戦争になった背景は本当に色々あるんだと思うし、そうならざるを得なかったのかもしれない。それでもその中で、こういう戦争の実際の風景、事実があるって事を覚えていたい。
2020/11/10
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