悪役レスラーは笑う: 「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 982)
悪役レスラーは笑う: 「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 982) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
プロレスは子どもの頃に見たことはあるが、力道山、馬場、猪木くらいしか思い浮かばない。ましてやグレート東郷となると、かすかに名前を聞いたことがあるというくらいだ。本書はプロレス史(裏面史でもある)をそのグレート東郷を軸に語ったもの。背中に日の丸と南無妙法蓮華経の題目が描かれた法被を羽織り、高下駄を履いて、額には「神風」と書いた日の丸鉢巻。戦後のアメリカのリングに登場した典型的な「ジャップ」のヒールである。しかも、試合開始前に相手レスラーの眼に塩をすりこんだりと、もうこれでもかというくらいに卑怯で悪い奴。⇒
2023/01/07
nonpono
「伝説の悪役レスラー」グレート東郷を巡る一冊。グレート東郷を巡る迷宮。映画を見ているようだった。戦後、アメリカで反日感情を揺さぶり有名だったグレート東郷。名前は知っていたが、あの力道山がこんなにも信頼を寄せていたなんて。そして「銭ゲバ」として嫌われたのは真実か。「週刊ファイト」の元編集長の井上義啓の言葉が刺さる。「プロレスとは、底がまる見えの底無し沼である」と。焼酎をワインで割りながら、ぽつぽつと話すグレート草津のインタビューが凄い。真実は藪の中。出自?日本?最後はほくそ笑むグレート東郷の残像が浮かんだ。
2024/09/23
けんとまん1007
自分を覆い隠そうとし続けることも、なかなかできることではないなと思う。そんな面を持ったグレート東郷。一方で、実業家としての面も凄い。そのエネルギーに根源は・・・という点もあるが、プロレスという文化のあり方、それをとりまく、この国の人たちの文化にも目が行く。人は、自分が知っていることでしか、評価しきれないのだろう。だか、分かれる。それと、この国のありよう・・・短絡的な熱狂と、さめやすさ、そして、あわてふためきながらも、諦めてしまう文化。これは、何とかしないと。
2012/08/18
ああああ
「卑劣なジャップ」という悪役として、戦中から戦後にかけてアメリカプロレス界で活躍したグレート東郷。彼の人柄と足跡を著者は追っていく。同時代の記述や証言から、事業家、レスラー、日系人としてのグレート東郷の素顔が浮かび上がる、ようでいてなかなか浮かび上がらない。その素顔に迫るたびにグレート東郷という人物はニヤニヤ笑いの悪役レスラーになってしまうのだ。大変いいドキュメンタリー。
2014/06/07
keiniku
大戦後アメリカで、敵だった日本人としてヒールを演じたグレート東郷を追ったノンフィクション。 グレート東郷は、日本人だったのか、中国人の血が混じっていたのか、韓国人だったのか、結局はわからない。 ナショナリズムとプロレスが結び付いている中で、「ナショナリズムは底が見えている底なし沼」の言葉と同じように、グレート東郷の姿も見えそうだと思ったら、泥の中に埋もれてしまう。そして彼の死と共に跡形も無くなってしまう、元から居なかったかのように。街を歩く人の姿一人一人にグレート東郷や力道山を探してしまう。
2019/03/16
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