和歌とは何か (岩波新書 新赤版 1198)
和歌とは何か (岩波新書 新赤版 1198) / 感想・レビュー
(C17H26O4)
大変おもしろかった。枕詞や序詞、掛詞など、和歌にはどうして持って回った表現方法が用いられているのか。意味や内容の伝達という観点からは余計なものに思える和歌的レトリックについて、沢山の和歌を例にあげ、時に図や問題を用いながら解説している。以下メモ。和歌的レトリックの基本は言葉の二重性にあり、文脈の流れと、文脈外の関係を共存させる。また、和歌的レトリックは、声(心)を合わせている(実際に声を出さなくても)ような気分にさせる装置でもある。声を合わせることによって、他者と共有される演技的空間が呼び起こされる。
2020/06/14
kaizen@名古屋de朝活読書会
サラダ記念日が,サラダでもなければ, 作った日でもないということを知りました。 演ずる和歌というものがあることを知りました。 枕詞,序詞など,和歌を作るのに必要な知見も知ることができます。 枕詞:違和感を生み出す声 序詞:共同の記憶を作り出す 掛詞:偶然の出会いが必然に変わる 縁語:宿命的な関係を表す言葉 本歌取り:古歌を再生するhttp://bit.ly/10CJ7MZ
2013/04/21
katsubek
時に和歌を教えねばならない身としては、改めて教えられるところが多かった。なぜ枕詞が基本的に五音なのかというのは、考えてみればなるほどその通りである。また、自然と人との交わるところに掛詞が生まれるという話や、縁語の技法の難解さとそれ故の美しさは、思わず興奮を覚えるほどであった。後半が少々流れが緩やかになってしまうのが残念なところだが、初心者が読んでも面白いところもある。……もちろん、難解なところもあるが。途中で読むのをあきらめてもいいから、かじってみて損はない。
2014/01/16
№9
和歌の入門書として知的好奇心あふれるエキサイティングな好著だった。第一部の「和歌のレトリック」では、和歌にこれほど巧みで豊かな仕掛けが施されているとはついぞ知らなかったし、第二部の「行為としての和歌」では歌が詠まれる現実の場から見た和歌、古に歌われた一句一句が今目の前に現出してくるかのような著者の考察はライブ感を感じさせるものだった。そして終章で「歌を作る作者」が心を社会化する過程で「作品の中の作者」に没我され表現される境地を和歌を生きるということと結ぶ。和歌の世界をもっと知りたいと思わせてくれた好著!
2013/05/07
べる
和歌は他者と心を合わせること。和歌の作り方によってその人物の社会性までを判断された意味が分かった。演じ方(レトリック)で読みどころの幅が広がる。枕詞は儀礼的空間を呼び起こす。例えて言うとヒーロー登場の音楽。序詞は風景と心情を結び付ける形で表現された共同の記憶。掛詞は、かな文字の発達で意識化された言葉の偶然の一致。縁語は、現実を表現する時に運命や宿命の感覚を強めて人々の心を惹き付ける。平安末期には古歌と新しさの共存という本歌取りが成長。歌の良し悪しを判定する歌合は、批評精神を高いレベルに押し上げた。
2020/02/24
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