『七人の侍』と現代――黒澤明 再考 (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1255)
『七人の侍』と現代――黒澤明 再考 (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1255) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
一つの映画を分析するというのは、こういう営為を言うのかと、もはや驚嘆すべき映画論である。『七人の侍』は、これまでに少なくても3度は見ているが、何と漫然と見ていたのかと反省というよりは、自分自身にあきれる始末。日本の映画史という文脈の中での位置づけ。そして、この作品が製作された1954年ということの意味(それはマールホルツの言う芸術の持つ一回性にも通じるだろう)。侍と農民といった階級間の、けっして埋まることのない階梯。「敗北と服喪」に表象される主題論。いずれを取っても実に高い説得力を持つ論考である。
2022/12/28
Sam
歴史的名作として世界的に評価され、いまでも世界のあちこちでリメイクやパスティーシュが製作されているという「七人の侍」。本書ではその映画史的な位置付け、制作にいたる経緯・背景等々、あらゆる角度からの分析がなされておりファンは必読と思います。私も非常に面白く読みました。もっとも、著者にしては教科書的な書き振り(大学や市民講座で「黒澤明論」といった講義でも設けるとしたらそのテキストとしてまさにピッタリ)でやや物足りなさを感じたのも事実だけど、岩波新書ということで堅めのアプローチをしたのかも。
2021/08/19
bura
積読本。図書館のリサイクルコーナーで頂いた本。私達にとっては古典的名作、黒澤明監督の「七人の侍」が今も尚、パレスチナやセルビアに到るまで世界の至る場所で現代的なテーマとして受け入れられ、その影響を受けた作品が発表されている。この事実を四方田氏は制作された1954年という時代背景、その構想から制作過程、映画の中の侍と百姓、そして「敵」である野伏せりたちについて等々、様々な角度から考察していく。現代に通じる丹念な映像分析を読み終えて、改めて「七人の侍」を観直してみたくなる一冊だった。
2020/05/16
jima
なるほど、と思いながら読んだ。時代背景から、「再軍備論争」「自民党だけが絶賛するという不幸な光景」等々。でも、「7人の侍」「用心棒」「椿三十郎」の黒沢映画、手塚治虫とちばてつやの漫画は、自分の骨や血肉になっている。
2015/08/27
おおかみ
映画史に燦然と輝く名作を、名作として埋没させるのではなく現代におけるアクチュアルなフィルムとして捉えたところに本書の特色がある。公開後、今に至るまで世界中でどのように受容され評価されてきたのか。いかなる社会的・政治的背景のもとに制作されたのか。黒澤明は何をなし、あるいは何をなし得なかったのか。黒澤明とは何なのか。まだまだ語り足りないという印象だが、全般的に納得できる考察だった。
2010/10/14
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