生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後 (岩波新書)
生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後 (岩波新書) / 感想・レビュー
mitei
著者が戦前戦後を生き抜いた父にインタビューした集大成。こういう証言て大事だなと思った。日本も過去にそれだけ国家存亡の危機があったという事を記憶に残す事が難しいんだろうな。戦争に負けるという事がいかに大変な事なのか、逆に戦後はこういう過酷を乗り切った日本が登っていくサクセスストーリーに感じた。
2016/06/24
遥かなる想い
2016年新書大賞第2位。 自分の父の人生を題材に、 日本の戦前・戦中・戦後の側面を描く。 著者自身が語っているように 対象人物が 高学歴ではなく、従来の学徒動員とは 違う視点の体験が記載されており 新鮮な 気がする。 先輩たちが生き抜いた昭和の日々..後世に 何をどう伝えるのか..そして若者たちは この本を読んで何を感じるのか。 歴史に学ぶという言い尽くされた言葉を 改めて実感する、そんな本だった。
2016/05/07
へくとぱすかる
著者自身のお父さんからの聞き取り。お父さんは1925年生まれ。裕福とはまるでほど遠い少年時代を送り、一兵士として二等兵のまま終戦を迎え、シベリアに抑留される。戦後も多くの苦難が続くが、お父さんは、社会情勢に翻弄されながらも、生活のために日々を必死に生きるが、その言葉は実に的確に物事を捉え、語っている。苦労して生きてきた人の証言は何と重いのだろう。
2019/06/05
kinkin
著者の父である小熊謙二。彼が生まれた1925年から学生、徴兵、シベリア抑留、帰国、病気、仕事、家族を通して彼の人生を追った本。読んで感じたのはどこのどんな人であれその人の生涯はその人にとってはドラマではないかということだ。戦前、戦中、戦後と言う言葉も今の若い人たちには通じなくなっている思う。私の父は1928年生まれ、謙二氏とほぼ同世代だ。生前聞いたことと重なることがいくつもあった。父からは貧乏くじを引いた世代とよく聞いた。今とは比べ物のならない苦労をしたと思う。そんな人達も少なくなった。昭和が遠のく・・・
2019/08/03
rico
一人の人間の人生をたどることは、その時代をたどること。小さな「個」の経験や想いをすくいあげ、形や意味を与える。戦前・戦中・戦後、そして平成。1世紀近くにわたるオーラルヒストリー。シベリア抑留を経験した稀有な語り手である父。優れた聴き手・書き手である社会学者の息子。どちらが欠けてもこの1冊は生まれなかった。収容所生活の壮絶さは圧倒的だが、そこに至る道筋とその後のくらしまで描くことで、あの戦争を「点」でなく俯瞰的な視座を持って捉えることを後押ししているような気がする。人を知ることは世界を知ること。圧巻でした。
2023/08/25
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