風土記の世界 (岩波新書)
風土記の世界 (岩波新書) / 感想・レビュー
tamami
著者である三浦佑之さんの近刊『風土記博物誌』を読み始めたら、本書を参照するようにとの記事が多くあり少しばかり回り道をする。『風土記』については、『日本書紀』や『古事記』の補完的な作品というくらいの理解であったが、著者の手に掛かることで、記事の裏に隠された古代世界の真の姿に触れる、謎解きにも似た思いを味わわせられる。「『日本書』の紀としての日本書紀、『日本書』地理志になろうとしてなれなかった風土記、それらから遠く離れて存在する古事記。」という著者の見解からは、それぞれを読み解く上で、多くの示唆を与えられる。
2024/05/06
yamahiko
地名の古層を明らかにする行為は、どこか征服を根拠付けるための作為が見え隠れするが、地域によってあるいは編まれた年によって、征服された側の幾ばくかの抵抗の印を残すものだと思った。資料を丹念に読み解いていく面白さが良く解った。新書の性格上、もっと深く知るための序章と捉えれば、物足りなさは致し方ない。
2016/12/11
Kazehikanai
常陸と出雲の風土記を中心に、今に残された5つの風土記を、古事記と日本書紀と対比しながら、解説する。風土記には伝承されてきた神話や伝説が記述され、この国の成り立ちが垣間見れる。各地の地名の起源や朝廷との関係性、伝説の天皇の滑稽な姿などが面白い。興味深いのは、古事記、日本書紀との共通、類似や差異。失われた逸文には、何が書かれていたか、何が書かれていなかったか。失われた歴史は永遠のミステリー。そういう意味では、古事記や日本書紀より奥が深い。
2018/11/03
こういち
「風土記」は面白い。滑稽で間抜けな神さまを描いていると思いきや、逸話に秘められた暗示を予感させる。現代にも残る数ある神事は先人たちのメッセージ。そして地名が語る、その土地の成り立ち。歴史は過去の出来事を綴りながら、喜怒哀楽を包むドラえもんのポケット。必要なものを必要な時に、どう取り出せるかで未来は変わる。本書は、「伝承を読む論理を鍛えて遺された資料に向き合うこと」の大切さを柔らかく、そして丁寧に語りかける。
2016/04/29
HMax
大和政権によって統一される以前の群雄割拠の時代の様子が風土記には僅かに残るようで、30-40あったと思われる各地の風土記が無くなってしまったことが残念ですが、それでも1300年以上も前の歴史書が写本等を通じて残っているというのは素晴らしいことだと思います。ISISによる紀元前から残る文化遺産の破壊、お隣では李氏朝鮮の仏教弾圧による徹底した廃寺。最近ではイタリア地震でのアマトリーチェの被害、後世に歴史を残すということは大事ですね。北陸地方を表す古名「コシ:越」についての話しが印象に残りました。
2016/09/03
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