世界遺産: 理想と現実のはざまで (岩波新書 新赤版 1791)
世界遺産: 理想と現実のはざまで (岩波新書 新赤版 1791) / 感想・レビュー
きいち
世界遺産、というと私は、姫路城やパルテノンよりも五島の教会やルソンの棚田といった知る人ぞ知る存在が思い浮かぶ。世の中全体から大切にされてきたとはいえない存在に特別な光が当たり、無関心だった人も手の平返しで予算投入を支持する様子はノーベル賞に似た感じ。いや決してそれが悪いことというわけじゃない。OUV(顕著な普遍的価値)を示し、その影響を受ける再帰的な過程こそ、このご時世大切と思うからだ。政治や産業との正しい妥協の追求。それは日本だけのことではないようだ。せめぎ合いの実態を幅広く教えてくれる得難い本だった。
2020/01/14
浅香山三郎
世界遺産の思想や背景にある基本的な考ヘ方を抑ヘた上で、近年の過剰な登録合戦や国威発揚への利用などの動きを解説する。日本についても、「宗像・沖ノ島」あるいは「九州・山口の近代化産業遺産群」、「潜伏キリシタン遺産群」などを例に、内容の多様化と政治的な問題化が論点となつたことなどを論じる。また、文化・文化財・民俗に関する考ヘ方の違ひから、世界遺産から漏れてしまふ地域では大事な事物の存在など、世界遺産の限界にも注意を促す。文化財担当記者ならではのカバー範囲の広いしつかりした解説書である。
2020/03/17
terve
現在の世界遺産条約は、それが作られた当時の目的とはかけ離れたところにあり、当時との乖離が生まれてきています。結局のところ時代が動いていること、普遍的な思想はありえないということが浮き彫りになってきています。「記憶遺産」なども存在していますが、ユネスコの世界遺産を選定する委員はさぞかし頭の痛いことだろうと思います。国々の思惑等もあり、一筋縄ではいかない問題ですね。
2019/10/03
さとうしん
世界遺産の概論というよりは、近年の申請・登録状況や関連の問題をめぐるルポといった感じ。遺産の保全と現地住民の居住環境とのバランス、実は観光集客に結びついてないという問題、「産業革命遺産」や「世界の記憶」をめぐる政治利用・政治判断の問題など、近年問題になったトピックは一通り触れられている。韓国絡みの話も、疑問点がないではないが、韓国特有の特殊な問題ではなく普遍的な問題として位置づけ出来ていると思う。水中遺産に関する話題に紙幅を割いているのも特徴。
2019/09/07
乱読家 護る会支持!
世界遺産は、人類資産を様々な脅威から守り、後世に伝える為の193ヶ国に及ぶ国際条約である。 にもかかわらず、、、、バーミヤンの大仏は、むしろ政治的人質にされて破壊された事。 日本のように、観光振興や地域振興に使われている事。 西欧諸国が多く選ばれ、ビジネスにつがっている事。 本来の目的を離れてきている世界遺産。 欧米や日本のような経済力の有る国は、自国の税金を使って遺産保護をすればいい。紛争地帯や貧しい国などで、保護が出来ない遺産に対して、先進国がお金を出し合って保護するのが本来の主旨ではないやろか??
2019/12/24
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