大岡信 『折々のうた』選 短歌(一) (岩波新書 新赤版 1813)
大岡信 『折々のうた』選 短歌(一) (岩波新書 新赤版 1813) / 感想・レビュー
KAZOO
この巻は「折々のうた」から短歌を編纂しなおしたものです。水原紫苑さんによるもので、春夏秋冬に分けてあり、短歌の歳時記だという気がしました。時代は様々なものが混在しており読んでいくだけで季節感が感じられます。読み直してみるとやはり大岡さんの解説は簡潔で短歌の作られた背景などがよくわかります。
2020/03/12
あきあかね
『折々のうた』選のシリーズの短歌篇は、時代順に編まれた俳句篇と違って、古今集に倣い、四季の歌、恋の歌、人生の歌という構成になっている。四季の歌を収める本書は、春夏秋冬の4つに分かれるのみで、藤原定家の隣に寺山修司が来るなど時代を超えた自由な並びになっている。それによって、自然や季節に対する不変の心性がより鮮明に感じられる一方、短歌の大きな歴史の変遷も的確な解説が示してくれる。 例えば、山部赤人の「田子の浦ゆうち出でて見ればま白にそ富士の高嶺に雪は降りける」の歌について、現代短歌では、⇒
2020/03/18
ひさしぶり
『折々のうた』は前のうたと次のうたが何かしら繋がり綿々とした作品となるように撰別されていたようですね。その中から季節別に古今の短歌を集めたもの。短命や悲運の人のうたは何故か心に刺さります。 覚え:●後世は猶今生だにも願はざるわがふところにさくら来てちる/山川登美子 ●鉢之子に菫たんぽぽこきまぜて三世の仏にたてまつりむ/良寛
2021/01/27
kaoru
『折々のうた』で大岡信が選んだ短歌の数々。解説は水原紫苑が書いている。実朝や紀貫之、茂吉や白秋、塚本邦雄や寺山修司。現在活躍中の歌人でもポピュラー過ぎる歌は掲載されずちょっと捻った選択が良い。当代一の詩人で評論家でもあった大岡が世を去って以来、時代の変遷もあるとはいえ言葉の世界が浅くなったように思えるのは私だけか。「現代短歌には依然として、冥界の大岡信を戦慄させるに足る、一人の和泉式部も存在していない」という水原の解説には、ネットやSNSで発信が可能になった現代短歌の隆盛への彼女なりの厳しさが感じられた。
2020/07/28
糸くず
長谷川櫂の歴史観が強烈に反映された〈俳句〉の巻と比べると、「古今和歌集と紀貫之の再発見者」である大岡に敬意を払って、古今集と同じく「四季のうた」「恋のうた」「人生のうた(雑歌)」の三部構成、配列を原著『折々のうた』の通りとした水原紫苑のリミックスはやや穏当か。とはいえ、時代を自由に行き来する配列なので、古代から現代へと至る季節的情緒の変遷、集団的な和歌と個人的な近現代短歌の断層がくっきりと見える。春の歌から一つ。〈いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春ゆかんとす〉(正岡子規)
2020/03/26
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