物語もっと深読み教室 (岩波ジュニア新書)
物語もっと深読み教室 (岩波ジュニア新書) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
文学研究って、おそらく全部「深読み」なのだろう。物語を深読みすると、ただ楽しみや時間つぶしで読むのとは、一味も二味もちがったおもしろさが見えてくるということ。谷川さんの「みみをすます」は名詩だが、なるほどこう読めば、詩人の思いがしっかり理解できる。ちなみに飯田蛇笏の句の穴埋めは当たりました。「坊っちゃん」を赤シャツ視点で考えることや、ファンタジーとして見る発想はおもしろい。参考文献の小林信彦・柳広司の小説が読みたくなった。作品と作者の関係を客観的に「もっと深読み」につながる読み方で捉えられるといいな。
2021/08/22
いちろく
国語教科書の編集委員も務める著者による物語の読み方教室。個人的に、内容をどのように伝えているのか?と記載内容よりも伝達手法に興味を持ったのが手にした理由。中高生向けの講座内容をまとめたモノなので解りやすいだけでなく、思っていた以上に物語を読み解くキッカケに重点を置いていた内容であり、興味深かった。私が中学生の頃に、こんな国語のセンセイに出会えていたらな・・・
2020/09/09
べる
「はらりとおもき」一行一行のことばに出会う時に目覚めてくる驚きを忘れてはいけない。深読みとは、作者さえも気付かない文章の真の意図を読むこと。語り手と作者を別のものと考える仮説が深読みの可能性を実現する。物語の読み方は①何が書かれているか②どのように書かれているか。『風の又三郎』は二重の風景を生み出す装置。語り手と視点と主人公の関係を考えて読むと別の風景が見える。物語の大概が「行って帰る」形式。『こころ』は教科書でなく、全体で読むと読み方が変わる。「よそよそし頭文字」自分と先生の関わりは違うのだと言いたい。
2019/04/26
やまやま
本書はフィクションであって、現実に著者が授業をこのように行ったものではないのですが、講義形式で文章を綴ったためにそう取られない場合も多いのですよ、これ本当はどこの学校の話と聞かれるんですよ、と笑いながら(あるいはしめたと思って?)別の講座でお話を伺ったこともありました。作者と主人公の分離を認識できる読解力の成長は国語の授業で重要なポイントなんでしょうね。時々子どもの現国のテストを試しますが、できないこと夥しくがっかりする一方、模範解答のように書くことが困難なのは受験から遠い日々ということなのでしょう。
2021/06/08
joyjoy
中学校図書館本。「作者」を忘れる練習! たしかに、大人になって、「作者」で本を選んで読むことが当たり前になっていた、と気づく。子どもと読む絵本さえも。作者を意識して読む楽しみもあるにはあるが、幼かった頃のように、その本、その文章、そのものに向き合う読書によって、より浮かび上がってくるものもありそうだ。 こんな講義を、学生のうちに聞いてみたかったな。
2023/05/16
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