天皇制の文化人類学 (岩波現代文庫 学術 3)
天皇制の文化人類学 (岩波現代文庫 学術 3) / 感想・レビュー
しゅん
王制=天皇制とは「演劇」を伴うシステムであり、そこでは権力のうちへ向かう力学と権力のそとへ向かう力学が同時に働く。源氏物語は、その相反する方向性を描いた文学として本書に召喚される。権力の外へ向かう運動も秩序のために回収していくのが権力の権力たる所以だが、著者は秩序を超えた混沌こそが本質であると考えているようだ。ただ、そうした別次元の混沌の在り方が本書で示されているとは思えなかった。自分が読み込めてないだけかもしれないが。
2022/12/09
猫丸
凝集させ、秩序を構成・維持するだけでは王権は未だ脆弱である。逆方向に散逸し、硬化した秩序のタガを緩めて新規性を導入する力をも包摂しないと、権力として立ち行かないということだ。ふつうの感覚だと、定常状態にはさすがに飽きる。しかし、そこそこの生活をさせ、くだらないショーでもあてがっておけば、おとなしく言うことを聞く存在が愚なる民である(パンとサーカス!)。支配の一般論としては整理がつくけれど、それだけでは面白くない。人類に共通の構造であるなら、叙述的にではなく、ある程度演繹的に論じられないだろうか。
2022/04/06
かんやん
王も、王子も、日本武尊も、ユダヤ人も、黒人も、トロツキストも、明治維新における将軍も、科学によって排除される伝統的思考形態すらもスケープゴートとするなんて、なんて杜撰な思考なんだ!スケープゴート論も、中心と周縁理論も、単なるアナロジーを敷衍しているだけだから、とても貧しいモデルとしか言えないし、そもそも一つか二つのモデルで文化や事象を説明できると考える発想自体の貧しさに唖然とせざるを得ない。その単純さと杜撰さゆえに逆になんでも説明できてしまうのを、このコピペ人類学者は誤解しているのだ。
2016/03/17
OjohmbonX
人々の反社会性・非倫理性への欲望を負わされるスケープゴートとしての王と、王のスケープゴートとしての王子。王=権力=中心に対する王子=道化=周縁。そんな王権の構造を古代天皇の物語や謡曲、源氏物語、アフリカ等の民族から取り出して紹介していく。でもたくさん見出せたからこの構造が帰納的に正しいと見るのは倒錯で、見出そうとしたから見出されただけだ。(取り出し方の上手下手はあるかもしれないけど。)そうじゃなくて、なぜそうした構造を見出そうとしてしまうのか、その起源を徹底して問う態度に欠けているせいで本書は退屈なんだ。
2013/07/09
TOMYTOMY
物語に潜む大衆の欲望。歴史的に振り返ることの面白さと発見。東洋西洋関係のない共通感覚
2019/08/04
感想・レビューをもっと見る