文化と両義性 (岩波現代文庫 学術 16)
文化と両義性 (岩波現代文庫 学術 16) / 感想・レビュー
獺祭魚の食客@鯨鯢
人間にとって非合理性を持つ共同幻想が文化、普遍性を持つのが文明であるとすれば、「神話」に出てくる「神」「鬼」は私たちに恵みを与えたくれるだけでなく災い(禍)ももたらす文化です。 荒神(あらたま)と和神(にぎたま)。ナマハゲは角がないので神であるとのこと興味は尽きない。 多神教の残る日本には両義性(二面性)を持つものが多々があります。畏れ奉る点では同じですが、コロナも人間に対して両義性を持つトリックスターの役割りを果たしているのではないかと思えてきました。(そう思わないと希望が見えてこない。)
misui
記号論や現象学を軸にして見る中心・周縁理論。大意としては「中心はその全体性の不可欠の部分として周縁を(排除しながらも)維持する」ということで、たとえば神話の中の悪、異人、権力構造、夢、日常言語に対する詩的言語など、このモデルを頭に入れておくと文化の様々な面において理解が容易になってきます。個人的には、中心と混沌との間の緩衝地帯を担う周縁、つまり周縁は「境界」であるという認識が得られたのが大きかったです(なぜかその認識が抜けていて自分でもびっくりしたのですが)。
2010/03/18
とみぃ
山口さんの本を読んでいると、同じようなテーマについて題材をとっかえひっかえして扱って、文化を読みとく手つきともども吸収できるので、読み終わったあと、ハハァンあれは「中心」と「周縁」だな、オォこれが「徴つき」というものかなんて、この本を眼鏡として周りを見る楽しさが味わえる。今回の読書では、「生気づけ」や「非日常化」、「多元的現実」なんて言葉が眼にとまった。さて、眼鏡も新たに文化がどんな風に見えてくるか、楽しみ。
2018/04/19
ゲニウスロキ皇子
レヴィ=ストロース、ヴィクター・ターナー、メアリー・ダグラス、山口昌男。当時全盛を誇った仏米英日の人類学者たち。全くいい時代だ。このころの人類学は世界史的規模の視座を獲得すべく野望に満ちていた。いわば人間文化を貫く普遍的な原理を血眼になって捜していた時代だ。山口昌男はこの時代の日本代表とでもいえようか。象徴論的な対立を仲介するトリックスター、境界に立ち現れる異化作用。どれも魅力的でスリリングな議論だ。しかし、その野望も半ば潰えた今、本書の紙面は幾ばくかのノスタルジィを燻らせている。なんだかさみしいね。
2011/09/30
qwel21
様々な文化を記号論のレベルで見てみるとそこには中心・周縁という補助線的関係が見えてくる。本人もまたトリックスターであったであろう、山口さんのとても興味深い論考でした。面白かった。
2010/03/19
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