パサージュ論 第5巻 (岩波現代文庫 学術 105)
パサージュ論 第5巻 (岩波現代文庫 学術 105) / 感想・レビュー
Ecriture
ベンヤミンは断片的資料を建築素材として、シュールレアリストらと同じく古くなったものの内に革命的エネルギーを見出し、19cの夢からの覚醒を促す点では彼らと袂を分かつ。過去の沈殿物を救済し、パサージュの麻薬的陶酔のように歴史を捉え直す野心的な試みが為されている。ナチの十八番でもあった「感情移入」によって永遠回帰する過去の事物を現在で塗り潰してしまうのではなく、あくまでも具体的な過去の破片を現在へと持って帰らなくてはならない。歴史の根源を、敷居でためらいまどろむ具体的事物の煌めきの内に求める遊歩者の軌跡である。
2013/06/21
roughfractus02
著者の死がこの本を未完にしたのか? 「本」とも呼べぬこの「書かれたもの」は確かに引用とメモの羅列で統一感を欠く。一方、辞書のようにA-Zに分類され、個々の項目に別項目への参照指示があり、覚書もそこに組み込まれる可能性があったような痕跡もある。だが、歴史を過去の集積ではなく、夢の深さで測り、現在をその粉砕と覚醒として読者に提示するには、文字の向こうに夢を見せる書物ではダメなのだ。都市を拒否する街路自身さながら諸断片の隙間が読者の覚醒を促すように敷き詰められ、辞書に偽装されたハイパーテクストとなる必要がある。
2017/02/14
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