知の遠近法 (岩波現代文庫 学術 130)
知の遠近法 (岩波現代文庫 学術 130) / 感想・レビュー
うえ
初めて聞く書物も多く驚かされた。『タルトゥ学派記号体系論集』のソ連の史家トポロフなど。彼は91年ソ連のリトアニア侵攻に抗議し、受賞拒否したことがあるという。「彼は言う。「歴史時代に続いて新しい時期がやって来るかもしれない。この時期には精神的秩序という価値系が再び決定的な役割を果たすことになろう。こうした方向が最も理想的に開花する時に、この価値系は歴史という形では納得いくやり方では表現できないし、ましてや進歩という視点からではない…」この発想は、とてもソビエトの学者とは思えないほど大胆である。」
2023/09/16
あかつや
著者の専門である文化人類学の本なのだが、扱われる題材がものすごく広い。おなじみ現地でのフィールドワークの話から、漫画『のらくろ』や映画について、歴史や医学なんかも。なかでも週刊誌とTVという2つのマスメディアに関して述べられた2つの章が印象に残った。これが発表されたのは70年代でいまや遠い昔に思えるが、内容が現在とそのままリンクするようなのだ。なぜそんなことが起こるのか、それは著者の論の普遍性というのもあるだろうが、それよりなによりマスメディアが全然変わっていないからだろう。そりゃマスゴミって言われるわ。
2019/08/18
qwel21
山口さんのフィールドワークの様子や周囲の人たちのとの交わりが書かれていて、どのように考えてきたのかの軌跡が見える。文化人類学の知識はあまりないので、正直言って知らない術語だらけ。他の本も読んでみようっと。
2010/03/18
こーへい
文化人類学者、山口昌男による評論集。以前読んだ「文化人類学への招待」より語り口が柔らかく、エッセイ集に近い印象を受ける。ティモールでの調査から週刊誌ゴシップの構造、国際学会での一幕など扱う対象は様々だが、特に田河水泡の漫画「のらくろ」に対する考察が個人的に印象的だった。「のらくろ」の描写と戦争との関連性、戦前の世代に対するその精神的影響など興味深い分析が多く、また記号論・神話性など複雑なテーマが並ぶ中で大衆漫画からも同様の主題を鮮やかに導く氏の姿勢が、この書籍で扱われる領域の幅広さを象徴するように思えた。
2016/07/30
sevengong
1970年代の「知の先端」を圧倒的な知識量と活動量で走り続けている様子が感じられる。ここから現在まで何がどこまで進展したかわからないが、この本を糸口にして調べてみたくなりました。
2012/08/19
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