道化の民俗学 (岩波現代文庫 学術 175)
道化の民俗学 (岩波現代文庫 学術 175) / 感想・レビュー
Gotoran
アジア・アフリカ、南アメリカなど世界各地で、両性具有、トリックスターにつてフィールドワークをしたと云う文化人類学者山口昌男氏初期代表作。エロスと笑い、風刺と滑稽に溢れる道化。世界各国の様々な芝居や劇、神話等に出てくる道化について、詳細に考察される。イタリアのアルレッキーノ、狂言の太郎冠者、中世劇ノ悪魔、アルレッキーノとギリシャ神話のヘルメス、アフリカのトリックスター神話、古代インドのクリシュナ、アメリカインディアン等々。実に興味深々の内容。本書も河合著『こころの読書教室』派生本。
2017/05/07
もちもちかめ
道化は生け贄として殺される運命にあるのなら、私がやはり道化として共同体に入っていくやり方は失敗すると確信。道化性を押し殺して普通人として仮面を被らねば殺される。ありがとう。やっと納得した。今まで5年以上同じ境遇に身を置いたことがないのは、穢れと共に追い出されてきたから。道化なのが私の本質ならば、穢れではなく、聖女としての部分の演技を強化すべきなのだな。弁慶とか、スサノオとかヘルメスとか。
2018/05/23
サケ太
伝説や空想上の道化師・トリックスターである、アルレッキーノをはじめとして、ヘルメス、エシュ= エレグバ、アルジュナなどに言及し、その役割、成立を書いている。スサノオや弁慶にまで話が及んでいるのが面白い。
2019/10/09
てれまこし
イタリア喜劇の道化アルレッキーノからヘルメス神話や地母神信仰まで遡り、さらにインドのクリシュナ神に飛び、北米先住民の信仰を日本神話や芸能と比較してしまう著者は、自らがあらゆる境界線を乗り越える神出鬼没の知の道化、トリックスターであることを自認している。自分たちの常識に凝り固まっている固い頭に一撃を食らわしたソクラテスもまたトリックスターだとすれば、哲学自体が一種の道化。この書などもまたひとつの「ソクラテスの弁明」である。皮肉なのは、これを理解する鍵は今日の哲学ではなくて民衆文化の方に見出せるということ。
2023/01/01
NICK
コンメーディア・デラルテの道化アルレッキーノに始まり、制度化された「ジョーキング」、ヘルメス神やクリシュナ神といった神話におけるトリックスターを、両義性、媒介性において見、そうした「道化」こそ人間の生の象徴的な次元、つまり神話的で演劇的な世界において、死と再生を担う根源的な存在であるとする、文化人類学の分野のみにとどまらず人間の根源的な部分を問う名著。人間の生が道化を媒介にした中心と周縁の緊張的関係に根ざすとすると、例えばレヴィナスなどはまさに内部/外部関係について思考した人物であったが……?
2015/09/06
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